目次
パリじゃないよ 名古屋シネマテーク
3日目はお昼過ぎから、名演小劇場と同じでこれまで行ったことがなかった〈名古屋シネマテーク〉へ。
この映画館があるのは、さまざまなカルチャースポットがひしめき合う今池エリアの、とりわけ渋い雑居ビル・スタービル。ちなみにこのビル、大大大という居酒屋も入っていて、夜になると店名の特大ネオンサインが外壁に光るのがかなりイケてます。
なんともディープな佇まい。大阪の味園ビルや三ツ寺会館のように、「よし入るぞ!」というテンションが必要なタイプのビルです。赤れんが風の壁が印象的な階段を2階まで上ると、ありました。
1982年、「観たい映画を自らの手で上映」することを目指して設立。自主映画上映集団・ナゴヤシネアストを中心に、100名以上の資金協力を得たそうです。名演小劇場といい、今でいうクラファンのようなかたちで、市民が協力して作り上げた映画館が名古屋には多いんですね。
館名はシネマテーク・フランセーズに由来していると思われます。パリにある、映画遺産の保存、修復、配給を目的とした文化施設です。名古屋シネマテークも同様に利潤追求を第一の目的にはしていないそうで、ぴったりの館名なのです。
この日は残念ながら都合の合う上映回がなかったので、映画鑑賞は断念し、本とグッズのみ購入。「名古屋シネマテーク叢書」というオリジナル小冊子シリーズの、鈴木清順監督の特集号と、木村威夫さんの特集号。それに、名古屋シネマテークの缶バッジです。
缶バッジは、近所の古書店・シマウマ書房、そして東山公園駅近くの書店・ON READINGとのコラボアイテムだそう。せっかくなので、〈シマウマ書房〉にも立ち寄ってみます。
店内は、1階と2階が吹き抜けで繋がった、開放感のある空間に本がずらりと並び、いわば“本のワンダーランド”という感じ。値段もわりとお手頃。伊丹十三監督と、精神分析学者の佐々木孝次さんの共著をお持ち帰りしました。
そろそろ夕方。旅の締めくくりに何を食べたいかといえば、〈JAZZ&COFFEE YURI〉のチキンライス! 1966年創業のジャズ喫茶で、久屋大通沿いの、名古屋のランドマーク・テレビ塔の近くにあります。目印は、ワニの看板。
余談ですが、これまたパリに、クロコディスク(Crocodisc)といういい感じのレコード屋がありまして。2020年に日本公開の映画『ショック・ドゥ・フューチャー』(2019)でも言及されていた有名店なんですが、こちらも店名に基づきワニがアイコン。ワニの店に狂いなし!というジンクスが、私の中で形成されつつあります(笑)。
夕方早めという、客足がちょうど谷間の時間帯。私が店に入ったとき、すでに一人客が2組いて、若い男性が食事を、若い女性が本を片手にコーヒーを嗜んでいました。いつも抜群の音響でジャズがかかっているので、一人でも入りやすいのです。
音楽に耳を傾けていると、ついにチキンライスがやってきました。これ、これ。ヘルシー志向なんてなんのその、米の一粒一粒がバターとケチャップをまとい、つやつやと輝いている。旨味たっぷりで、脳天を撃ち抜かれる味です。アイスコーヒーのスッキリした苦味が、また合うんだなぁ。
ただ……、米の量が多い! 毎回チキンライスが目の前に出されるたび、「そうだ、想像の2倍の量なんだった! また『少なめで』ってお願いするの忘れた……」と反省。でも結局毎回言い忘れては、おいしいので、お腹をパンパンにして食べきってしまうのです。
人の気前がよく、レトロ可愛い映画館が残る街・名古屋。
夕暮れが目に染みた頃、東京に帰るべく、名古屋駅へと向かう私なのでした。
今回のさんぽコース
地下鉄 桜通線「今池駅」9番出口→UFJ銀行すぐ南)
- 福岡を代表するミニシアターと、レトロな喫茶店で空想にふける楽しみ【KBCシネマ/屋根裏 貘】
- 異国情緒あふれる街・神戸。 伝統と誇りを肌で感じながら、復興を遂げた街の記憶に思いを馳せる 【シネ・リーブル神戸/THE BAR J.W.Hart/モロゾフ神戸本店】
- ウィーンで世界最古の映画館と、『ビフォア・サンライズ』の撮影地を巡る一日 【BURG KINO/Cafe Sperl】
- 山陰地方唯一のミニシアターへ。 鳥取・松崎で自然とカルチャーを浴びる一日 【ジグシアター/Librarie by HAKUSEN/汽水空港/HAKUSEN】 ②
- 山陰地方唯一のミニシアターへ。 鳥取・松崎で自然とカルチャーを浴びる一日 【ジグシアター/Librarie by HAKUSEN/汽水空港/HAKUSEN】 ①
- 街に溶け込む地元のシアター&ローカルフードでスリランカ・コロンボを堪能【Ritz Cinema/Andreya】
- 県民1人あたりのスクリーン数が日本一! 映画の街でもある金沢のミニシアター 【シネモンド/ピノ/もっきりや/金沢21世紀美術館】
- 老舗「ミニシアター&喫茶店」で、 わたしの“憧れの京都”を満喫 【京都シネマ/イノダコーヒ】
- 日本初の「ユニバーサルシアター」を訪問! 映画館と商店街のぬくもりに触れるひととき 【CINEMA Chupuki TABATA/カレー屋 マヒマ、長峰製茶】
- あの頃の記憶を手繰り寄せるシアターと街並みと映画と。 【テアトル梅田/ナカザキカフェ】
- 日本を飛び出し、リスボンをぶらり! 映画も観光も、大流行のジャパニーズフードまで楽しめるさんぽコース【CINEMA IDEAL/AFURI リスボア店】
- 小津安二郎&大林宣彦ゆかりの尾道、唯一の映画館へお出かけ! 【シネマ尾道/香味喫茶ハライソ珈琲】
- 名古屋のレトロ可愛い映画館巡り→大盛り喫茶メニューに舌鼓! 【名古屋シネマテーク/JAZZ&COFFEE YURI】
- 名古屋のレトロ可愛い映画館巡り→大盛り喫茶メニューに舌鼓! 【名演小劇場/ボンボン】
- 名古屋のレトロ可愛い映画館巡り→大盛り喫茶メニューに舌鼓! 【シネマスコーレ/コンパル メイチカ店】
- 福岡を代表するミニシアターと、レトロな喫茶店で空想にふける楽しみ【KBCシネマ/屋根裏 貘】
- 異国情緒あふれる街・神戸。 伝統と誇りを肌で感じながら、復興を遂げた街の記憶に思いを馳せる 【シネ・リーブル神戸/THE BAR J.W.Hart/モロゾフ神戸本店】
- ウィーンで世界最古の映画館と、『ビフォア・サンライズ』の撮影地を巡る一日 【BURG KINO/Cafe Sperl】
- 山陰地方唯一のミニシアターへ。 鳥取・松崎で自然とカルチャーを浴びる一日 【ジグシアター/Librarie by HAKUSEN/汽水空港/HAKUSEN】 ②
- 山陰地方唯一のミニシアターへ。 鳥取・松崎で自然とカルチャーを浴びる一日 【ジグシアター/Librarie by HAKUSEN/汽水空港/HAKUSEN】 ①