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誰かの思い出を共有できる場所。 その空間のおかげで、みんなと家族になれた
― 桜田さんは、寅さんが自分を表す時に使う「フーテン」という言葉を知っていましたか?
桜田 : 今回『男はつらいよ』に関わらせて頂き、初めて聞きました(笑)!
― そうですよね(笑)。寅さんは、テキ屋をしながら全国を旅しているので、“定職につかずぶらぶらしている人”という意味で使われています。
桜田 : そういう生き方を含めて、今、寅さんみたいな人には、なかなか出会えないと思います。私がもし寅さんに出会っていたら、自分の人生や考え方が大きく変わっただろうなと思うんです。作品の中で寅さんに出会った登場人物だけでなく、観客の方など、多くの人に影響を与え続けた存在ですよね。
そんな大きな存在なんですが、なんだか身近な存在のようにも感じていて。
― 2002年生まれの桜田さんにとっても、寅さんは身近な存在に感じられますか?
桜田 : 撮影中も、「寅さんは今ここにいます!」と、みんなで感じながら演じていたんです。だから、本当にそばにいるような気がしていました。あと、撮影の待ち時間に共演者の皆さんが、寅さんのことについて話しているのを伺っていたというのも、あるかもしれません。
― 第1作からの出演者である、倍賞千恵子さんや前田吟さん、吉岡秀隆さんたちですね。
桜田 : スタジオの入り口に前室という、スタッフや出演者が一息つけるような溜まり場があるのですが、そこで撮影の合間は大きなテーブルを囲んで、みなさんとお話しをしたり、お昼ご飯を食べたりしていました。
今回、『男はつらいよ』に参加させて頂くにあたり、撮影に入る前はとても緊張したのですが、ここでコミュニケーションをとることで、撮影中はリラックスして臨めたと思います。
― 桜田さんが演じたユリは、今作で初登場でしたが、シリーズおなじみのメンバーである、さくらや博、満男などの中にいても全く違和感なく、馴染んでいると感じました。
桜田 : ありがとうございます。“くるまや”にいると、初めての場所なのに不思議と安心感があって、すぐ自分がこの場に馴染んでいくのを感じました。
― “くるまや”は、『男はつらいよ』の登場人物たちがいつも集う場所でした。居間にはちゃぶ台がひとつ置いてあって、みんなでご飯を食べたり、談笑したりする。いつも誰かしらの人気が感じられる空間として描かれています。
桜田 : みんなの思いが詰まっていて、温かくて…。私は“くるまや”に「包まれている」と感じていましたね。この映画には、「家族がそろう瞬間」がたくさん描かれています。
― さくらさんと一緒にお布団を敷いて、みんなで川の字に寝る準備をするシーンもありましたね。桜田さんも、そんな風に家族と一緒に過ごす時間はありますか?
桜田 : 私は実家暮らしなんですけど、ご飯を食べる時はなるべく家族そろって一緒に食べるようにしているんです。犬を飼っているので、一緒に遊ぶためによくリビングにいますし(笑)。だから、家族が集う空間って、私の生活の中に普通にある存在だったので、“くるまや”に自然と馴染んだのかもしれません。
― 『男はつらいよ』は、かつて新作が夏と年末年始に年2回公開されていました。そのため、多くの人が家族とご覧になった映画でもあると思います。桜田家は、お正月どのように過ごされていますか?
桜田 : 年末はみんなで年越しそばを食べながら、テレビを見て、年が明けてからは箱根駅伝を応援しに行ってました。そして、そのあと祖母の家に行くというのがいつもの流れでしたね。
― 家族みんなで、箱根駅伝を応援しに行くんですか? 仲がいいですね!
桜田 : みんなで旗を振って応援してます(笑)。母とは仕事の話もしますし、プライベートのことも一番話している相手なんじゃないかな。何かあったら、相談する相手が母ですね。父とは好みが似ているので、一緒に洋服を買いに行くこともあります。
― お父さんと一緒に買い物ですか!?
桜田 : はい! 一緒に洋服や家具を選ぶんです(笑)。兄とは、共通の趣味であるアニメや漫画について話しますし、二人でディズニーランドに行ったりもします。
― え!? それは、相当仲がいいですね!
桜田 : 一番の友達…と言ったら言い過ぎかもしれませんが、それに近い存在かもしれません。でも、1、2年前までは、私も兄も反抗期だったので、家の中は今みたいな雰囲気ではなかったんです(笑)。それがやっと、私が高校生になって落ち着いてきたので、ようやく仲良くなった感じですね。そのタイミングで、『男はつらいよ』に巡り会えたと言えるとも思います。
世代を超えて楽しめるシリーズ映画の魅力
― 桜田さんは、家族でリビングやダイニングに集うということでしたが、みんなで映画を観ることはありますか?
桜田 : 全員で一緒に観るわけではありませんが、みんなが共通して観ているのは、『ハリー・ポッター』と『スター・ウォーズ』シリーズですね!
― シリーズ全部ですか?
桜田 : 全部観てます! 特に、父と兄と私が好きで。新作の『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(2019)も予告を観てワクワクしています。早く観たいです!
― 映画は普段ご覧になります?
桜田 : プライベートでは、動画配信サービスで移動中やお風呂に入ってる時、あと寝る前にも観ますね。映画館には、友達と一緒に行きます。学生料金で観れるので!
― そうですよね!
桜田 : 最近だと、『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』(2019)を観に行きました! 前作も観ていたので、続編も気になって。
― スティーヴン・キングのホラー小説を映画化した『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(2017)の完結編ですね! ホラー映画も観られるんですか?
桜田 : 「バン!」って脅かされる作品は苦手なんですが、「…出てくるか? 出てくるのか?……出てきた!」というのも苦手なんですけど(笑)、楽しもうと思えば楽しめる感じです。
― (笑)。『IT/イット』はピエロのペニーワイズが、そんな感じで出てきますよね。
桜田 : 『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』を観ると、ピエロがトラウマになりそうでした。…でも、続編も観たことですし、もう一度観直そうかなと思っています(笑)。
― シリーズ作品といえば、『男はつらいよ』も「ひとりの俳優が演じたもっとも長い映画シリーズ」として、世界記録を保持している作品です。
桜田 : 私は、シリーズの中で、1作『男はつらいよ』(1969)と48作『男はつらいよ 寅次郎紅の花』(1995)と49作『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 特別編』(1997)を撮影に入る前にまず観ました。あと、新作に引用されている「メロン騒動」のエピソードがある第15作『男はつらいよ 寅次郎相合い傘』(1975)も観ましたね! 浅丘ルリ子さん演じるリリーさんが、かっこよくて。
― 「メロン騒動」は、ひとつの貰い物のメロンを巡り、家族みんなで喧嘩をするエピソードですね。このシーンにも登場するリリーは、寅さんが最も愛した女性です。
桜田 : かっこいい女性が好きなんです。アニメや漫画でも、“かわいい”というよりは、“かっこいい”女性に憧れます。そういう意味でも、リリーさんは憧れの女性です。でも、やっぱり、一番印象に残っているのは、1作目のおじいちゃんが、おばあちゃんに告白するシーンですね。
― なるほど! 桜田さん演じるユリからすると、「おじいちゃんである博(前田吟)がおばあちゃんであるさくら(倍賞千恵子)に告白している」シーンですね。
桜田 : 私が演じたユリは、「さくらさんに似ているな」と台本を読んだときから感じていました。周りの人から愛される存在ですよね。だから、おばあちゃん(倍賞千恵子)といれるときは、できる限り、側にいさせてもらってたんです。ユリはおばあちゃんっ子なんです。
― さくらさんの隣にいて、現場で色々お話しされたんですね。
桜田 : 私の撮影がオールアップした日、倍賞さんがスカーフをくださいました。ご自身が身につけていたスカーフを、「ユリちゃんに似合うから、どうぞもらってください」とおっしゃってくださって。もう…光栄で大切に保管しています!…いえ、もったいなくて使えません(笑)!! これは保管して、私の宝物にします。