コロナ禍で停滞した日々を過ごしていると、人生こんな感じでいいのかな…と考え込んでしまうことがあります。このまま、ずっと変わらぬ毎日を繰り返すのだろうか?と不安になったり、仕事やプライベートを充実させている友人のSNSを見て、置いて行かれているような気持ちになったり。今までなら「パーっと飲みにでも行こうよ!」と友人に声をかけて、ストレス発散することもできましたが、なかなかそうもいかないご時世。とくに私はフリーランスで活動しているため、会社勤めの人より孤独を感じやすいんですよね…。
「あの頃は、よかった」なんて言う大人には、絶対になりたくないと思っていたのに、いつの間にかそんな大人になってしまっていて、友人とLINEをしては「学生時代は楽しかったよね」と言い合う日々。かつて思い浮かべていた25歳の自分は、もっと輝いていたはずなのに!とモヤモヤ。そんな時に出逢ったのが、森絵都さんの名作小説『カラフル』を実写映画化した『HOMESTAY(ホームステイ)』(2022)です。
今作は、管理人と名乗る謎の人物に選ばれた魂・シロ(長尾謙杜)が、同時期に死んだ高校生・小林真の身体にホームステイをするように命じられ、100日間というリミットのなかで、小林真の死因を突き止めていくという物語。あらすじだけを見るとファンタジー要素を強く感じます。
「なるほど、なるほど…現実を忘れてリフレッシュするために、観てみよう!」と再生ボタンを押しました。しかし、その予想を裏切り、本作はとことん現実に向き合った作品だったのです。「実は、登場人物全員いい奴だった!」なんてこともないし、それぞれに深い闇を抱えていて、焦ったり、迷ったり、周囲と比べて自分を卑下したり…この映画には、葛藤を抱きながら精一杯生きようとしている人たちがいました。
「人生は所詮、ただのホームステイなんだから」
真の死因を突き止めることができたシロが、最後につぶやいた言葉です。この言葉を聞いて、私は肩の力が抜けていくのを感じました。
自分の人生だと思うから、どうしても力んでしまう。「もっと〜しなきゃ」に縛られることになる。「たった一度きりの人生後悔しないように生きないと!」と言う人たちに影響を受けて、知らず知らずのうちに自分に負荷をかけていたのかもしれません。でも、この身体にホームステイしているだけなんだ…と考えると、少しラクになりました。
死にたいと思っていた真が、「もう少しだけ、この人生を愛してみようと思う。しぶとく生きていけばいい」と前を向いた時、私も勇気づけられました。いまは冴えない日々だとしても、しぶとく生きていけば、いつか幸せだと思える日が来るかもしれない。いや、きっと来るはず! この映画は、“どんな自分もまるっと愛してあげよう”と思うきっかけを私に与えてくれたのです。人生という名のホームステイに疲れた時は、またこの映画を観返したいと思います。この作品には、世界をカラフルに変える力が潜んでいるから。
- 介護の中、夢を捨てずにいられたのは、あいつの「ただいま」が希望に向かわせてくれたから。映画『大脱走』
- 眠れない夜に私を救ってくれたのは、70年前の名作ミュージカル映画だった 『雨に唄えば』
- ままならない家族への感情……それでも確かに愛してる。『シング・ストリート 未来へのうた』で描く私の夢
- 嘘の中の紛れもない「リアル」。 いつまでも彼の踊る姿を観たいと思った 『リトル・ダンサー』
- 「どんな自分も愛してあげよう」 肩の力を抜くことができた『HOMESTAY(ホームステイ)』
- 映画って、こんなに自由でいいんだ。そんなことを気づかせてくれた『はなればなれに』
- 日々の選択を、愛ある方へ。自分を大切にするための映画『パパが遺した物語』
- 大丈夫。あなたが私を忘れても、私があなたを思い出すから 『43年後のアイ・ラブ・ユー』
- どうしたら色気を醸し出せるのか!?核心を隠すことで見えてくる、エロティックな世界『江戸川乱歩の陰獣』
- 幸せになるには、まず「幸せに気づく」こと。こんな2020年を希望にかえて締めくくる『食堂かたつむり』
- 仕事も休めばいい、恋もなんとだってなる。人生の舵は、自分が握っているのだ『嗤う分身』
- 号泣したワンシーンが、思いを届けるきっかけになる『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』
- 「私の人生、まんざらでもないのかも」見過ごしていた“当たり前”に魔法がかかる『顔たち、ところどころ』
- 東京という大きな「生き物」が、 人生の岐路に立つ人を静かにつつんでくれる『珈琲時光』
- 狂気を殺さない!愛してみる。生きていく『逆噴射家族』
- 動き出さない夜を積み重ねて、たどり着く場所がきっとある『ナイト・オン・ザ・プラネット』
- 時代の寵児バンクシーの喜怒哀楽や煩悶を追体験!?観賞後スカッとするかしないかは自分次第… 『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』
- 「帰省」を疑似体験。離れて暮らす父親の素っ気なくも確かな愛情『息子』
- 90分でパリの100年を駆け抜ける!物足りない“現在”を笑って肯定しよう!!『ミッドナイト・イン・パリ』
- 映画の物語よりも、そこに流れる「時間」に没入する 『ビフォア・サンセット』
- 慣れない「新しい生活」のなかでも、人生に思いきり「イエス!」と言おう!『イエスマン “YES”は人生のパスワード』
- 夢や希望、生きる意味を見失った時、再び立ち上がる力をくれた映画『ライムライト』
- 人の目ばかり気にする日々にさようなら。ありのままの自分が歩む、第二の人生。 『キッズ・リターン』
- 人に嫌われるのが怖くて、自分を隠してしまうことがあるけれど。素直になりたい『トランスアメリカ』
- 成功は、競争に勝つことではない。 「今を楽しむ」ことを、教えてくれた映画『きっと、うまくいく』
- それぞれの場所で頑張る人たちへ 「声をあげよう」と伝えたい。その声が、社会を変える力につながるから『わたしは、ダニエル・ブレイク』
- 僕が笑うのは、君を守るため。 笑顔はお守りになることを知った映画『君を忘れない』
- 心に留めておきたい、母との時間 『それでも恋するバルセロナ』
- 「今振り返っても、社会人生活で一番辛い日々でした」あのときの僕に“楽園”の見つけ方を教えてくれた映画『ザ・ビーチ』
- “今すぐ”でなくていい。 “いつか”「ここじゃないどこか」へ行くときのために。 『ゴーストワールド』
- 極上のお酒を求めて街歩き。まだ知らなかった魅惑の世界へ導いてくれた『夜は短し歩けよ乙女』
- マイナスの感情を含む挑戦のその先には、良い事が待っている。『舟を編む』
- 不安になるたび、傷つくたび 逃げ込んだ映画の中のパリ。 『猫が行方不明』
- いつもすぐにはうまくいかない。 自信がないときに寄り添ってくれる“甘酸っぱい母の味”『リトル・フォレスト冬・春』
- 大人になって新しい自分を知る。 だから挑戦はやめられない 『魔女の宅急便』
- ティーンエイジャーだった「あの頃」を呼び覚ます、ユーミン『冬の終わり』と映画『つぐみ』
- 振られ方に正解はあるのか!? 憧れの男から学ぶ、「かっこ悪くない」振られ方
- どうしようもない、でも諦めない中年が教えてくれた、情けない自分との別れ方。『俺はまだ本気出してないだけ』
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