目次
3年ぶりに行動制限のなかった今年のお正月。私も地元の滋賀に帰り、家族団らんや友人との時間を満喫しました。
しかしアラサー独身女性にとっての久しぶりの地元は楽しいことばかりではなく、周囲からのさまざまなプレッシャーや、ライフステージの違う友人と自分を比較して落ち込んだり、モヤモヤする気持ちも味わいます。
そんな鬱憤をためこんだ私は、気分転換に憧れのミニシアターである「京都シネマ」へ行くことを思いつきました。
商業施設のワンフロアで営業を続ける、
京都の老舗ミニシアター
1988年にオープンした京都シネマの前身である「京都朝日シネマ」は、世界中の良質な作品を上映するミニシアターとして、京阪神の映画ファンによく知られた存在でした。2003年の閉館後、京都朝日シネマの元支配人が設立した会社を運営母体とし、京都シネマの名で現在の場所での営業を始めます。
そんな京都シネマは、幼いころからミニシアター系の映画が大好きだった私にとっても、特別に輝く存在でした。観たい新作映画の上映劇場欄にいつも名前を連ねるその場所は、その頃高校生だった私にとって滋賀の北部から電車で行くには少し遠く、大学から社会人生活のほとんどを東京で送ってしまったこともあり、結局足を踏み入れることはありませんでした。
訪れたのは、成人の日を含んだ三連休。
滋賀からJRで京都駅に向かい、振袖を着た新成人であふれる地下鉄に乗り換えて、烏丸線の「四条駅」で下車します。京都シネマが入っている商業施設・COCON KARASUMA(古今烏丸)は、四条駅の2番出口・四条烏丸西直結。
その日は京都らしい、いまにも雨が降りだしてきそうな曇天でしたが、濡れることを心配せずに向かうことができました。
COCON KARASUMAのエスカレーターに乗って3階で降り、ロビーの方向に向かうと、特徴的な映画館のロゴが見えてきます。
中は広いロビーと、赤・緑・青で色分けされたスクリーンが3つ、そしてロビーの外にも広めの通路と待合席があります。上映時間よりも少し早めに着いたので、上映作品に関係する展示を見たり、自販機でコーヒーを買って待合席でボーっとしながら時間を潰しました。
この日は1980年公開(日本での初公開は1982年)のフランス映画『ラ・ブーム』を観ることに。『ラ・ブーム』は当時13歳だったソフィー・マルソーのデビュー作で、日本でも大ヒットを記録した作品です。
日本公開40周年となる昨年には、年末から各地の映画館でデジタル・リマスター版の上映が行われ、京都シネマのロビーも往年のファンと思しき多くの紳士淑女で賑わっていました。なかにはデートで訪れているであろうカップルの姿や、若い大学生の姿も。
開場時間となり、上映されるシネマ3に入場します。
「ラ・ブーム」とは、パーティーを意味します。本作は、パーティーに誘われることを夢見る13歳の少女とその両親の、恋にまつわる様々な騒動を描いた作品です。
自己卑下でいっぱいだった私が作中特に惹かれたのが、主人公ヴィックの母・フランソワーズ(ブリジット・フォッセー)のキャラクターです。家事や育児を行いながらフリーランスのイラストレーターとしても働く彼女は、連載を勝ち取ったり、仲間たちとアトリエを持ってイキイキと働いたり、パートナーとの関係に悩んだり。とにかく人の目を気にせずに、自分の人生を謳歌しまくっています。
演じるブリジット・フォッセーの美貌とフレンチ・シックな着こなしもあいまって、2時間ほぼ彼女に釘付けに。ポップでコメディ的な要素も多く、ほとんどの席が埋まった場内からは笑いも漏れる楽しい映画体験となりました。そして観終わるころには、萎んでいた気持ちもすっかり元に戻り、「私もフランソワーズのように、自由に生きよう!!」と京都を通り越してフランスに行ったくらいのリフレッシュ感を得ました。
すっかり勢いづいた私はもう一つ、“憧れの京都”をコンプリートするため、京都シネマから歩いて10分ほどの距離にある「イノダコーヒ」の本店へ向かいました。
歴史ある老舗喫茶店で、
お腹も心も満たされて
1940年創業のイノダコーヒは、老舗がひしめく京都でも最も有名な店の一つとして知られている喫茶店です。谷崎潤一郎や高倉健などの著名人にも愛された名店で、現在は京都市内を中心に9店舗を展開しています。
それぞれに外観や内装が異なり、訪れた本店は風情ある町屋の雰囲気を残した佇まいが特徴。店内は洋風のサロンを思わせる昭和レトロな空間が広がっていて、蝶ネクタイをつけて正装したスタッフの方が、最高のおもてなしを演出してくれます。
お腹が空いていたので、まずは喫茶店の王道のナポリタンである、「イタリアン」を注文しました。蓋つきのシルバープレートで運ばれてきたアツアツのイタリアンは、ケチャップの甘みと酸味が懐かしい逸品。
食後には名物のホットコーヒー、「アラビアの真珠」を注文します。創業時から提供されているこのブレンドコーヒーはミルクと砂糖を入れて飲むことが推奨されており、せっかくなので、普段はブラック派の私もお勧めのスタイルでいただくことに。
これが、感動の一杯でした。絶妙な量のミルクと砂糖が、深煎りブレンドの豊かな香りとコクを引き立たせます。
そうして胃も心もすっかり満足して、私は帰途につきました。
大人になっても京都からの帰り道はやっぱり少し長いけれど、行きたいところに行って観たいものを観て、自分を元気にすることができる。
憧れの京都シネマへの道のりは、そんな小さくて確かな自由を教えてくれました。
今回のさんぽコース
阪急京都線「烏丸駅」23番出口 三井住友信託銀行口直結)
PINTSCOPEでは、これからも日本各地や世界にあるミニシアターを紹介していきます!
ぜひ、Twitter公式アカウントをフォローして、あなたにぴったりのさんぽコースを見つけに来てください。
- 福岡を代表するミニシアターと、レトロな喫茶店で空想にふける楽しみ【KBCシネマ/屋根裏 貘】
- 異国情緒あふれる街・神戸。 伝統と誇りを肌で感じながら、復興を遂げた街の記憶に思いを馳せる 【シネ・リーブル神戸/THE BAR J.W.Hart/モロゾフ神戸本店】
- ウィーンで世界最古の映画館と、『ビフォア・サンライズ』の撮影地を巡る一日 【BURG KINO/Cafe Sperl】
- 山陰地方唯一のミニシアターへ。 鳥取・松崎で自然とカルチャーを浴びる一日 【ジグシアター/Librarie by HAKUSEN/汽水空港/HAKUSEN】 ②
- 山陰地方唯一のミニシアターへ。 鳥取・松崎で自然とカルチャーを浴びる一日 【ジグシアター/Librarie by HAKUSEN/汽水空港/HAKUSEN】 ①
- 街に溶け込む地元のシアター&ローカルフードでスリランカ・コロンボを堪能【Ritz Cinema/Andreya】
- 県民1人あたりのスクリーン数が日本一! 映画の街でもある金沢のミニシアター 【シネモンド/ピノ/もっきりや/金沢21世紀美術館】
- 老舗「ミニシアター&喫茶店」で、 わたしの“憧れの京都”を満喫 【京都シネマ/イノダコーヒ】
- 日本初の「ユニバーサルシアター」を訪問! 映画館と商店街のぬくもりに触れるひととき 【CINEMA Chupuki TABATA/カレー屋 マヒマ、長峰製茶】
- あの頃の記憶を手繰り寄せるシアターと街並みと映画と。 【テアトル梅田/ナカザキカフェ】
- 日本を飛び出し、リスボンをぶらり! 映画も観光も、大流行のジャパニーズフードまで楽しめるさんぽコース【CINEMA IDEAL/AFURI リスボア店】
- 小津安二郎&大林宣彦ゆかりの尾道、唯一の映画館へお出かけ! 【シネマ尾道/香味喫茶ハライソ珈琲】
- 名古屋のレトロ可愛い映画館巡り→大盛り喫茶メニューに舌鼓! 【名古屋シネマテーク/JAZZ&COFFEE YURI】
- 名古屋のレトロ可愛い映画館巡り→大盛り喫茶メニューに舌鼓! 【名演小劇場/ボンボン】
- 名古屋のレトロ可愛い映画館巡り→大盛り喫茶メニューに舌鼓! 【シネマスコーレ/コンパル メイチカ店】
- 福岡を代表するミニシアターと、レトロな喫茶店で空想にふける楽しみ【KBCシネマ/屋根裏 貘】
- 異国情緒あふれる街・神戸。 伝統と誇りを肌で感じながら、復興を遂げた街の記憶に思いを馳せる 【シネ・リーブル神戸/THE BAR J.W.Hart/モロゾフ神戸本店】
- ウィーンで世界最古の映画館と、『ビフォア・サンライズ』の撮影地を巡る一日 【BURG KINO/Cafe Sperl】
- 山陰地方唯一のミニシアターへ。 鳥取・松崎で自然とカルチャーを浴びる一日 【ジグシアター/Librarie by HAKUSEN/汽水空港/HAKUSEN】 ②
- 山陰地方唯一のミニシアターへ。 鳥取・松崎で自然とカルチャーを浴びる一日 【ジグシアター/Librarie by HAKUSEN/汽水空港/HAKUSEN】 ①