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今回は11月23日公開の、北野武監督による最新作『首』です。
私は、小さい頃に親が『Dolls ドールズ』(2002)を観ていた記憶と、高校の文化祭でダンス部の女子達が『座頭市』(2003)のテーマ曲で踊っていたのを見た記憶があるだけで、その後は北野作品に触れる機会がありませんでした。
単純に触れる機会がなかっただけで、なぜか通ってこなかった北野作品。
そんな私がなぜ『首』について書くことになったのかというと、織田信長役で出演されている加瀬亮さんの「柔らかいイメージから離れた役」の演技が昔から好きで、『首』の予告編で尾張弁を撒き散らす加瀬亮さんを観て、これは絶対公開日に見ようと意気込み、前々から観たかった『アウトレイジ』(2010)と、夫に勧められた『HANA-BI』(1997)を今更ながら鑑賞しました。
この連載では「アウトレイジ」について書こうと思っていたのですが、担当の方から「それなら北野監督の最新作『首』で書くのはいかがですか?」とお声がけいただき、9月頃に試写会へ。
北野作品に触れて間もない私が書くのは恐縮ですが、ここはせっかくの機会。文章も爪も、念入りに取り組んでまいります。
とはいえ、当然ネタバレなしで書くことになるので、どうしても俳優さんの話に偏ってしまうのですが、今回私が一番驚いたキャスティングが副島淳さんです。
いつも朝はNHKの朝ドラからの流れで「あさイチ」を見ているので、どうしても「あさイチの副島淳さん」というイメージが強く、この『首』にどう登場されるのか全く想像できなかったのですが、作中では織田信長の側近・弥助として出演されています。
(Netflixのオリジナルアニメ『Yasuke』で主人公・ヤスケ役を副島淳さんが演じられていることを後から知りました。こちらは弥助が主人公として描かれていて、音楽がフライング・ロータスというのも気になります。)
弥助は、戦国時代に日本に渡来した黒人男性で、実際に本能寺の変でも明智軍と戦った人物とされています。
『首』は「戦国版アウトレイジ」と言われているのをたびたび目にすることがあり、確かに戦のシーンでもそうでないシーンでも、人がばったばったと死んでいく様は『アウトレイジ』に近いものがありますが、私がより具体的に、そして瞬間的に「アウトレイジだ」と感じたのは、この弥助が出てくるシーンの“とあるセリフ”でした。
本能寺の変の描き方もかなり独特で、最初は脚色だと思っていたのですが、後から調べると忠実かもしれない諸説の部分が入っていたりして、時代考証の面でもかなり練られていることが分かります。
(『首』の完成報告会見でも北野監督が、本能寺の変についての動機や詳細は80ほどの説があるという話をされています。)
会見でも北野監督が「戦国を題材にした映画やドラマはどれも綺麗すぎる」という話をされていましたが、この『首』にはヒーローがいません。
明智光秀(西島秀俊)は一見すると真面目で、忠誠心がありながらも自分の中にある正義を奮い立たせて信長に立ち向かう、という人物に見えますが、そんな光秀を含む全員が互いを探り合い、騙し合う様子には生優しいものが存在しません。
黒田官兵衛(浅野忠信)が人を言いくるめる時の胡散臭さや、千利休(岸辺一徳)の何かを刺すような目線は、観ているだけで畏怖からくる笑いのようなものがこみ上げてしまいます。
実際に私は観ながら口角が上がっていました。
予告編では戦にびくびく怯えている様子だった百姓の茂助(中村獅童)ですら、だいぶ序盤で裏切られます。もう誰も信じられません。
(余談ですが、そんな中で私が唯一親しみを持ってしまった人物は「鯛を食べるおじいさん」です。一瞬の登場なので、ぜひ劇場で確認してみてください。)
綺麗事ばかりではなく、というよりも、綺麗事など最初から存在しないような世界観は、一貫性があって気持ちが良いです。
北野作品らしいお笑いの要素も入っているのですが、笑いと死が間髪入れず交互にやってきて、それがあたかも日常であるかのように誰一人として疑うことなく、淡々と互いの命が消えていきます。
そんな彼らは正気なのです。
その正気を、私たちは「常識を覆す」「破壊的」「狂気」という言葉で表したとしても、彼らからすると誰かをヒーローに仕立てて、正義感と誠実さをもって正面から敵に立ち向かう人物、なんてもののほうが嘘に思えるのかもしれません。
『首』のキャッチコピーとして「狂ってやがる。」という言葉が書かれていますが、それがあの時代の日常で、生活そのものだったとしたら、今の私たちがおかれている状況や常識、時代劇とはこういうものだという認識のほうが、あの時代を生きた人から見ると正気ではないのかもしれません。
今回の爪は、戦国時代の壮烈さや、腹の中が読めない様子を黒や金で表しています。
映画の公式サイトや、ポスタービジュアル、そして『首』というタイトルの字にも所々に走っている棘のようなモチーフを親指の爪に描いています。
個人的にはっとしたのは、安土城のシーンで織田信長と家臣たちのいる部屋の壁の藍色です。
あの藍色をネイルポリッシュで探すのは難しかったのですが、白に紺を重ねたり、青に深めの青を重ねたりして、試行錯誤しながら親指の青を作りました。
『首』には山や森での戦闘シーンが多く、かなり緑が映えている印象もあったので、小指には何色もの緑を重ねて塗っています。
左手薬指の赤い爪は、円柱のような物体が切断されたようなモチーフにしていて、その断面は心臓のような形をしています。
左手の小指の爪は、黒の上から赤いラメを描いたように見えますが、これは赤いラメの上から黒を殴り塗りしたものです。
赤い液体がへばりついているような質感を出したかったのですが、黒の上から赤を描いてしまうと、どうしても赤いポリッシュが下地の黒の影響を受けてしまって鮮やかに見えなかったり、通常の赤だと少しマットすぎる見え方になるので、赤と黒を逆にしてラメを使うことで、赤の鮮やかさと液体としてのテカりが出るようにしました。
つけ爪が乗っている台紙は、黒い台紙を首の皮一枚でつながっているような形に切り取ってみました。
「刎ねる天命」
● Pick Up ネイルポリッシュ
SMELLY マニキュア 011 シアープール
シアーネイルの良いところは、下に重ねる色次第で、何通りもの色を作り出せるところ。
単色でもよく使っていますが、青をもっと深くしたい時にもぴったりの色です。
● 使用ネイル
・NAILHOLIC BL908
・NAILHOLIC SP011
・NAILHOLIC WT080
・SMELLY マニキュア 011 シアープール
・TMネイルポリッシュM ブラック・ホワイト
・sundays ネイルポリッシュカラー 13 チリペッパーレッド
・NAILHOLIC GD037
・TMネイルポリッシュM ブラック・ホワイト
・sundays ネイルポリッシュカラー 13 チリペッパーレッド
・NAILHOLIC GD037
・TMネイルポリッシュM ブラック・ホワイト
・TMネイルポリッシュM ホワイト
・paネイルカラー S058
・Kure BAZAAR ネイルカラー 150 カクタス
・NAILHOLIC GR 706
・NAILHOLIC GR 713
・FIVEISM×THREE ネイルアーマー 07 JG xkss
・NAILHOLIC SP011
・TMネイルポリッシュM ホワイト
・TMネイルポリッシュM ブラック
・NAILHOLIC GD036
・TMネイルポリッシュM ブラック・ホワイト
・NAILHOLIC RD414
・TMネイルポリッシュM ブラック・ホワイト
・NAILHOLIC RD403
・NAILHOLIC RD471
・TMネイルポリッシュM ブラック
↓映画『首』の原作を読む!
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