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編集部オススメ!「歌が楽しめる映画」特集

思いっきり歌を楽しみたい!
オススメ音楽映画4選

Sponsored by GACHINKO Film
『雨ニモマケズ』
©️GACHINKO Film.
なんだかモヤモヤするけれど、うまく気持ちを消化できない…。そんな時は、思わず一緒に歌ったり踊ったりしたくなる映画を観るのはいかがでしょう? 登場人物たちの歌にのせて自分の感情に向き合うことができるかもしれませんよ!
今回は、編集部オススメの「歌が楽しめる映画」をご紹介します!

時間も関係性も一瞬で飛び越える声

●『リンダ リンダ リンダ』(2005)

長年の付き合いのある友人と「そういえば一緒に行ったことなかったよね」と初めてカラオケに行った夜、その歌声を聴いて、知らない人が目の前に現れたような気持ちになったことがあります。何もかも知ったつもりでいたその子の、全く知らない一面を目撃したような嬉しさと気恥ずかしさ。歌声というのは、普段の話し声ではあまり見えてこない、その人の芯にふれた何かを乗せている気がするのです。

文化祭を目前に、成り行きからザ・ブルーハーツのコピーバンドを結成することになった、女子高生たちの姿を描いた青春映画『リンダ リンダ リンダ』(2005)。些細な内輪揉めによってボーカルが脱退してしまった軽音部の3人は、韓国人留学生のソン(ぺ・ドゥナ)に声をかけ、最終日の本番を目指して練習を重ねていきます。この映画で、直立のままマイクを持ってソンが歌い始めた時、どうしようもなく心が揺さぶられたことを覚えています。

先生に言われた“日韓交流文化展示会”の準備も、どこか他人事のような表情で手伝っていたソンが、ただの高校生として同級生とステージに立ち、日本語の曲をちょっと無骨に、力強く歌う姿を見ると、自分について何かを語ることもなかった彼女の、これまでの時間に一瞬でふれたような気がしたのです。

きっと歌には、人を楽しませるために歌う曲と、自分のために歌う曲があって、映画の中のソンも私の友人も、自分のために曲を歌っていたから心が揺さぶられたのかもしれません。どんなに同じ時間を過ごしても、気持ちを言語化しようとしても見えなかったものを、歌声は一瞬で飛び越えて届けてしまう。だからこそ、人前で歌うことはいつだって特別だし、緊張もする。でも、なにより楽しいのです。

(安達)

私もこんな風に歌ってみたい!!

●『天使にラブ・ソングを…』(1992)

高校時代、合唱部に所属していた私。当時の合唱部は校内最大の部員数を誇っていました。そんな合唱人気の理由のひとつに、私が中学生の時(1993年)に公開された映画『天使にラブ・ソングを…』(1992)の大ヒットがあったことは間違いありません。

ギャングの殺人現場を目撃してしまったクラブシンガーのデロリス(ウーピー・ゴールドバーグ)は、警察によってカトリック教会の修道院に匿われることに。修道女としての厳しく禁欲的な生活に対して激しく抵抗していたデロリスでしたが、壊滅的にレベルが低い聖歌隊の指揮を任されたことで本領を発揮していきます。

デロリスは聖歌に様々なジャンルの音楽を取り入れ、聖歌隊を生まれ変わらせます。聖歌隊の評判のおかげで教会のミサには多くの人が訪れるようになるのですが、最初の稽古でデロリスが若い修道女の発声指導をするシーンや、はじめてのミサでの歌声が教会の外の人たちまで呼び込んでしまうシーンは、今でも鮮やかに思い起こせるほど印象的でした。そして、そうやってデロリスが引き出した歌声のパワーは、修道女たちのマインドを変え、教会と街の人たちとの関わりを変え、デロリス自身をも変えていきます。

実は、本編内で聖歌隊が歌を披露する回数はそんなに多くはありません。それなのに、観た人の心には高らかに歌声を合わせる聖歌隊の楽しそうな姿が最も強く焼き付いているはず。あんな風に気持ち良く歌声を響かせてみたい、あんな風に心をひとつにしてみたい!そう思って合唱をはじめた若者は、きっと私たちだけではなかったでしょう。いま観返しても、デロリスによって修道女たちが歌に目覚めていく様子はとても鮮やかで、なぜか涙が流れてしまうほどドラマチックな感動に満ちています。

修道女だけではなく、スクリーンのこちら側にいる私たちを駆り立て、かけがえのない青春を与えてくれたデロリス。彼女が作り出した歌声は、あなたの中に眠っている歌への情熱も目覚めさせてくれるかもしれません。

(八巻)

歌うことで、迷いのその先が見えてくる

●『雨ニモマケズ』(2024)

あまり交友関係が広くない私の知り合いに、ゴスペルを習っている人が3人います。彼女たちがゴスペルにハマっていく姿を見て、「こんなにも人を惹きつけるゴスペルの魅力って何なの?」とずっと不思議に思ってきました。

黒人霊歌をルーツに持つ「ゴスペル(GOSPEL)」ですが、『天使にラブソングを…』の公開で空前のブームとなって以降、日本ではカルチャースクールや音楽教室などが続々と誕生し、現在約20万人、そのうち90%がキリスト教に属さない人々に歌われており、それは全世界にも例をみない稀有な例だそうです。

ゴスペルのステージが開催されるホールを舞台に、出演者やスタッフの人生模様が交錯する映画『雨ニモマケズ』(2025年2月8日公開)。一年前に亡くなったゴスペル音楽家(東ちづる)を歌でおくるため、生前の関係者やゴスペル合唱団が一同に集まるのですが、迷いや悩みを抱えたまま本番に臨む参加者の姿も。しかし、そんなことをお構いなしに、本番は近づいてきます…。

冒頭、自分はキリスト教徒ではないのにゴスペルを歌ってもいいのかと悩む歌い手の一人に、あるゴスペルシンガーが「迷いの先にあるものを感じさせる。それがゴスペルにはある」と伝える場面があります。その言葉に導かれるように、このステージを通して、葛藤のその先へ向かう登場人物たち。

「迷いの先にあるもの」を感じようとすることこそ“生”であり、ゴスペルの魅力はまさに、この過程を感じられることにあるのではないか、と今作に感じさせられました。…そういえば、最近「生きる喜び」を体感できるようなことがあんまりなかったなぁ…と、ゴスペルを歌う登場人物たちを観て羨ましくなった私。人前で歌う一歩はなかなか踏み出せそうにありませんが、まずは本作の主人公・関口南(安野澄)のように、予想外のことが次々と起こる場所へ身を投じることから始めてみようかと思います

(小原)

怒りを歌にのせて

●『スクール・オブ・ロック』(2003)

社会の“理不尽”に出くわした時、「反抗しても無駄」と諦め、怒りをのみこむ癖がついた大人になってしまいました。あの押し殺した私の感情はどこにいってしまったのでしょうか。私の中に沈殿し続けているのでしょうか。

「アンガーコントロール」という言葉があるぐらいですから、一般的にも「怒」は自己管理が難しい感情なのだと思います。発生したものだけでなく、発生しなかったものに対しても。若葉竜也さんにインタビューした際の「感情が出せないから、みんな苦しいんですよ」という言葉に深く納得したのを覚えています。

ロックを愛する落ちこぼれのミュージシャン・デューイ(ジャック・ブラック)が、名門小学校に臨時教師として潜り込み、生徒たちとロックを通して交流する姿を描いた『スクール・オブ・ロック』(2003)。デューイが、子供たちの日頃の怒りを引き出し、歌にしていくシーンが大好きなのですが、「全員しっかり怒っているか?」という問いかけに私自身がハッとさせられました。「そうか、怒っていいんだ」と思ったと同時に、「怒りたい」という気持ちがある自分に驚いたのです。私もこの生徒たちみたいに、「怒っていいよ」と誰かに言ってほしかった。沈殿していた私の気持ちまでも、デューイは引き出してくれました。

我が娘を見ると、Adoやちゃんみなの歌が大好きで、部屋で大大大熱唱。いつもは「うるさい!」とストップをかけてしまうのですが、今日は私も一緒に大声で歌ってみようかな。

(小原)

人生に歌があれば
FEATURED FILM
故人をおくるメモリアルパーティが開かれる。
スタッフとして慌ただしく舞台裏を駆け回るミナミ(安野澄)、ゴスペル界の重鎮の父との確執をかかえたアーティストのミナト(上村侑)、亡くなった音楽家の息子タツヤ(諏訪珠理)をはじめゴスペル合唱団の面々の人生が開演前の舞台裏で交錯する。
そしてパーティの幕が上がり、音楽とともに集まった人々の物語が始まる。
©️GACHINKO Film.
出演:安野澄、諏訪珠理、上村侑、木村知貴、梅垣義明、東ちづる
脚本・編集・監督:飯塚冬酒
製作・配給 GACHINKO Film

2025年2月~新宿K’s cinemaほか全国劇場公開
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