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その「常識」って、本当に正しい?
『はじまりへの旅』は、超厳格な父ベン(ヴィゴ・モーテンセン)と6人の個性豊かな子どもたちの物語です。この家族は、森で自給自足の生活を営んでいます。一家はあるできごとをきっかけに、自家用バスで街へ出発。この旅の中で、街の常識にカルチャーショックを受けたり、父子同士で初めて衝突したりしながら、家族それぞれが少しずつ自分の殻を破り、変わっていくのです。
大森さんは「英語の脚本を読んだだけで、すごく感動して泣いてしまった」と話します。それは自分らしさを貫く一家の姿に、ときには常識を疑うことも大切だと教えてもらえたから。先行きの見えない今の時代だからこそ、そこにもっと多くの人が強く共感するような気がして、心から「この映画を日本に届けたい」と思ったそうです。
また本作は、自身と家族とのある記憶とリンクしたとも言います。厳しい両親に反抗したい気持ちを、ガマンすることが多かったという学生時代。でも大人になってから、ふと「親も完璧じゃなく、同じ人間なんだ」と気づきます。これをきっかけに段々、両親と新しい対等な関係で向き合えるようになったそう。
誰にでも訪れるはずなのに、意外と周りに相談しにくい、このいわゆる“親離れ・子離れ”の過程が、この映画の中ではいきいきと描かれます。ここにも大森さんはすごく共感を覚えたと言います。
『スタンド・バイ・ミー』や『イントゥ・ザ・ワイルド』など、主人公が旅を通して成長するロードムービーがずっと好きだった大森さん。『はじまりへの旅』も「全シーンがお気に入り!」と語るほど、大森さんにとって“愛しちゃった1本”です。でも思いが強いからこそ、かえって友人たちには「もし気に入られなかったら?」などと考えてしまい、あまりオススメできていないとのこと。
それはもったいない! 世間ズレした、この一家のぶっ飛び具合が笑えるし、カラフルな服装が可愛いいし、シガー・ロスはじめ劇中で流れる音楽もセンスがいい!! 見せ方がポップだから、真剣なテーマがあってもヘビーに思う人はほぼいないはず……などと話していたら、取材の最後、大森さんが吹っ切れたように「やっぱり、友だちの誕生日にプレゼントに添えて、『はじまりへの旅』のDVDを贈ることにします!」と。
大森さんの“好きなものは好き!”と言わんばかりの笑顔が素敵で、何だかうれしくなってしまったのでした。