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なぜ、こんなにも愛される作品になったのか? 「ベビわる」の現場にいると自ずとわかる

髙石あかり×伊澤彩織×池松壮亮 インタビュー

なぜ、こんなにも愛される作品になったのか? 「ベビわる」の現場にいると自ずとわかる

作品が反響を呼びシリーズ化していくことは、前作を超える「観客の期待」に応えるという覚悟を、常に背負い続けていくことでもあります。
2021年に劇場公開されるやいなや、口コミでじわじわと反響が広がり超低予算映画でありながら異例のロングランヒットを記録した『ベイビーわるきゅーれ』。2023年に公開の『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』では「1作目を超える」という誓いのもとチームが再結集し、殺し屋女子二人の“アクション×生活”という「ベイビーわるきゅーれ」ブランドを確立。そして、シリーズ最強のヴィランを迎えた第3弾『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』が2024年9月に公開となります。
殺し屋コンビ・ちさととまひろのオフビートな日常はそのままに、今の日本アクション映画の最前線とも呼ぶべき、圧巻の身体表現を目撃することができる今作で、ちさととまひろコンビを演じた髙石あかりさんと伊澤彩織さん、そして、“史上最強の殺し屋”を演じた池松壮亮さんに、創作を積み重ねてきた「ベイビーわるきゅーれ」チームだからこそ実現したこと、その強みについて伺いました。
ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ

「命の取り合いをしている」という緊張感

超低予算映画でありながら、日本映画界に“ガールズアクション”というジャンルを確立させた「ベイビーわるきゅーれ」シリーズ。第3弾では“史上最強の殺し屋”冬村かえでが、ちさととまひろの前に立ちはだかります。そのヴィランを池松壮亮さんが演じられると初めて聞いた時は、いかがでしたか?

髙石絶句…。

伊澤うん。

髙石「ベイビーわるきゅーれ」に!?…って。

伊澤そんなわけがない!って、ね?

髙石そのくらい驚きました。この作品の、ギアがひとつ変わるんだろうなっていうことを直感しましたし、自分たちもその変化についていかなくてはいけないと覚悟を決めました。

伊澤私たちが池松さんと対峙するシーンがあることはわかっていたので、どういう戦いになるんだろうってドキドキもしましたが、自分がついていけるかどうか不安もありました。

池松(静かに首をふりながら)…。

池松さんは、『劇場版 MOZU』(2015)や『宮本から君へ』(2019)、『シン・仮面ライダー』(2023)など、これまでも身体的な準備が必要とされたりアクションシーンが求められたりする役も多く演じられてますが、「ベイビーわるきゅーれ」シリーズ、ということでの心構えはありましたか?

池松はい。現在、日本アクションの最高峰にあたる作品だと認識してたので、心して向かいました。アクションを専門としていない僕のような俳優が入ることで全体のレベルを下げてしまわないか、1・2よりアクションが落ちたねと言われないために自分に何ができるのか、オファーをいただいてからしばらく頭を抱えました。

アクションに関してはその後も不安を抱えたままでしたが、それ以上にいま参加することで、シリーズが新たな可能性をひらき、さらに進化していくための手助けができるかもしれないと思いました。

ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ

池松冬村かえでというキャラクターをこれまでになかった強烈な異物感として存在させ、「ベイビーわるきゅーれ」の世界と、ちさととまひろを、より際立てるような方法を探してみたいと思ったんです。

このチームに池松さんが入ることで、よりよいクリエイティブが生まれる予感がしたと。

池松予感というよりも、挑戦してみたいと思わせてくれました。アクションに関して実際にやってみると、こんなに大変なんだ、こんなことを二人は1・2と続けてきたのかと、驚愕しました。

ちさととまひろが、生き生きと、伸び伸びと戦えるように、毎日「かえでがどこまでいけるのか」と必死でした。

やはり2対1の戦いはきついのでしょうか。

池松きついですね。二人ともめちゃくちゃお強いですから(笑)。

髙石・伊澤(笑)。

ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ
©️2024「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」製作委員会

髙石私たちはバディだから、一人が攻撃に行ったらどっちかは逃げて、とか入れ替わる瞬間がありますけど、池松さんはずっと一人で戦ってる状態でしたもんね。

池松今まで、そんなにたくさんのアクションを経験してきたわけではないですけど、俳優対俳優、俳優対アクション俳優ですら、向き合う時にどうしても嘘の世界の遠慮が出てしまうものなんです。

でも、二人は「遠慮する」を許さない空気があったと。

池松どこまで互いに「遠慮せずぶつかることができるのか」、「安全に危険を冒していけるか」、二人の超人的な身体能力についていきながら、引っ張っていただいたと思います。

この先、二人の相手をできる人がどれだけいるのか…。自分はなんとか成立させてもらいましたが、今後現れますかね(笑)、二人が強すぎて誰も戦いたくなくなるかもしれないですよね。

伊澤でも、私たち東京の「殺し屋協会」の中で4位、5位なんです。強さ。

ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ
©️2024「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」製作委員会

髙石そうそう、設定では。

伊澤“ちさまひ”よりもっと強いやつが上にいるんです、漫画の『呪術廻戦』みたいに(笑)。

池松二人には早々に全国制覇してもらって、海外に渡ってもらうしかないかもしれませんね。

それくらい今シリーズと二人のコンビには夢を見せてもらえる気がしてしまいます。様々な期待が膨らみます。そうした作品にしたいと誰もが夢見ますが、なかなか叶うものではありませんから。

池松さんから見て、“ちさまひ”コンビの魅力はどのようなところにありましたか?

池松個々でも「強い個性」と「画面を支配できる俳優力」を持っていること、さらに二人になった時は絵に描いたような「敵なし」になりますよね。二人がだらだらするところ、反してキレキレで倒していくところ、ずっと観ていられます。

実際のお二人も僕が知る限り本当に仲が良く、尊敬し合い、励まし合い、何より活かし合っていて、補い合っています。奇跡のような組み合わせなんだなと感じました。

ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ

髙石・伊澤わぁ……。

池松さんに褒められている間、お二人がずっと顔を見合わせてそわそわしていましたね(笑)。

伊澤いや、池松さんも、もうすごかったんです。

髙石冒頭のかえでが登場するシーンも、試写で初めて観た時「何これ!」ってなって。

伊澤私たちも撮影が別だったので、初めて観て。でも、噂レベルでは伝わってきてたんです。

「池松さん、すごかった」と現場でも噂になっていたと!

伊澤はい、ずっと話題になっていて。冒頭の登場シーンでかえでは泥まみれですけど、それは「顔についている泥が足りない」って言って、池松さん自ら水溜りの泥を顔に塗ったらしく、周りが驚いてたとか。

池松(笑)。

ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ
©️2024「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」製作委員会

殺しの記録を日記につけながらひとり内省していたり、自分なりの美学を持っていたりと、かえでには、どこか孤独と切実さが感じられる役でもありました。

髙石かえでが、鏡の前にひとりで静かに佇んでいるシーンとか、いいですよね。一方で、人に話しかけるのが苦手で、お弁当買う時も「お箸ください」とか言えなかったり。

伊澤かえでのひとりのシーンが、本当にかわいいんですよ。阪元監督がすごいのは、1作目と2作目の時もそうですけど、出てくるキャラクターがみんな憎めないところですね。

前作で阪元監督は、「この世界における“悪”とは何かを、すごく考えました」とおっしゃってました。

伊澤今作で「冬村かえでは殺すんだけど…」っていうまひろのセリフがあるんですけど、阪本監督が「殺す」を違う言葉にしようか悩んでたことがあったんです。「倒す」も違うし、「勝つ」も違うな…って。それを聞いて、私もはっとして。

二人にとってかえでは敵だけど、どっちが勝つとか、どっちが正義なのか、じゃないんだなって。まぁ、どっちも殺し屋なのでそもそも普通ではないんですけど、でもお互いに自分の正義があって、それをぶつけて闘っているんだなと。

ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ
©️2024「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」製作委員会

クライマックスの対決は、バディとして歩んできた“ちさまひ”と、孤独に戦ってきたかえで、それぞれが殺し屋として積み重ねてきた時間が交錯し、物語としてもアクションシーンとしても、シリーズ最大の緊迫感でしたね。

伊澤敵対しているかえでと、共闘しているちさとと、三人での戦いの一体感をすごい覚えてて。あそこのアクションは、池松さんの動きのスピードが早くて早くて。

池松いやいや。

伊澤でも、一年前に撮影したことを思い出すと、よくあんなに精神を研ぎ澄ませられていられたなって。ついていけないって思うくらい、私たちも本当に必死で、お互いの必死がどんどん積み上がっていました。

でもそれが、集中力が上がっていく要素になっていたんじゃないかな。最終的に、これは「命の取り合いなんだ」というのを感じられていた。そう錯覚するくらいの特別な緊張感があの撮影現場にはありました。

ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ

チームが共闘し続けることで、磨かれたもの

『ベイビーわるきゅーれ』というインディペンデント映画のオリジナル作品がシリーズとなり、ここまでの盛り上がりを見せていたことを、当時、池松さんはどのようにご覧になっていましたか?

池松1作目が公開された時から、その反響は届いていました。僕も拝見し、日本映画に素晴らしい作品と若い才能たちが出てきたことを外から勝手に喜んでいて。

ただその頃は、自分とこの作品との世界線が全く繋がってない状態だったので、オファーを頂いて驚きました。その意外性も今作に興味を持つことができた要因のひとつでした。

ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ
©️2024「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」製作委員会

池松さんは、3作目で実際に現場に入られてみて、髙石さんと伊澤さんは、1作目から参加し、今回改めて感じたこのチームの強みは何ですか?

池松沢山あって、ひと言では言えないのですが…。

伊澤撮影中に池松さんに言われて、そのとおりだなと思った言葉があって。

「これは僕の持論ですけど、作品に対して、よりよいものにしようとする人が3、4人いれば作品はいい方向に向かうけど、この現場はその人数が多すぎる」って。

池松うん。

伊澤確かにそうなのかもしれない、と思って。阪元監督が書いてくれた脚本がゼロだとして、それを形にしていくうえで、これをいいシーンにするには、というのを各分野のプロの人たちが、いろんな角度から捉えてくれてるんですよね。

髙石今回、池松さんと前田敦子(入鹿みなみ役)さんが参加してくださったこともそうですし、人に恵まれた現場だなと改めて感じました。スタッフさんも監督もそうですけど、似たような部分を全員共通で持っているような気がしていて。お互いの距離感も含めて、心地のいい現場だったと思います。

ただ仲良く、ということだけではない伊澤さんと私の関係性だったり、最後のラストシーンでの伊澤さんと池松さんの関係性だったりとか、そういう繋がりが画面に映るのかなって。

ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ

池松いま話を聞きながら思い出すのは、各部署にちゃんとキーマンがいることです。

ひとつの作品に、そういう熱をもった方が3、4人いれば、もちろんその人たちのセンスや才能が不可欠ですが、そういった人の、作品に対する熱って伝播していくもので、困難があってもオセロのようにひっくり返っていったりするものなんですが、今作にはキーマンとなる方がたくさんいて。二人がちょっと動くだけで、涙ぐむような人たちがいるんですよ(笑)。

髙石そうなんですよ!

伊澤撮りながら泣いてるスタッフとかいましたよね(笑)。「まひろがこんなに成長するなんて…」って。愛が深いんです。

髙石「泣きすぎ、泣きすぎ!」ってみんなで言ったり。アクションにおいては、やっぱり園村さんの存在が大きいかな。園村さんが「ベイビーわるきゅーれ」のアクションにしてくださってるというか。

園村健介さんは、アクション監督としてシリーズの1作目からチームに入っていらっしゃいます。池松さんは、真利子哲也監督の『ディストラクション・ベイビーズ』(2016)の現場でも、園村さんとご一緒されていましたよね?

伊澤『ディストラクション・ベイビーズ』のアクション、私、大好き…。

池松園村さんは、真利子さんの作品によく参加されていて。だからドラマ版『宮本から君へ』(2018)の時も少しだけご一緒しました。

伊澤私、あの作品のアクション部にいました。

池松え! そうなの?

ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ

伊澤池松さんと蒼井優さんが二人乗りしている自転車から転げ落ちるシーンがあるんですけど、お二人が「パッドいらない」って言っていたんです。でも、「だめです、自転車でコケるんで入れてください」って渡したりして(笑)。

池松あの時、助けらてたんですね。

伊澤さんはスタントパフォーマーとしても活躍されているので、数多くのアクション現場を経験されているかと思いますが、その中でも、これは「ベイビーわるきゅーれ」ならではだなと実感するアクションシーンはありましたか?

髙石園村さん自身が好きなアクションのスタイルなのかもしれないんですけど、頭からつま先までフルで入れた、広い画のロングショットで見せる1対1の戦いとかですかね。

園村さんは、人の動きだけで空間を移動させていく“人間アスレチック”が本当に好きなんだなと思うんですよね。

ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ

冒頭の、宮崎県庁を舞台にしたアクションシーンでも、かえでを追うまひろが階段の手すりを滑り降りながらキックを入れるなど、新鮮で意外な動きが、空間を移動しながら連続で行われていました。

伊澤園村さんは、ガチガチのファイトの中にちょっと面白い動きを入れてくるんです。「え、そこで滑るの?」とか、私も毎回驚きます。ちょっとファニーな要素を入れて、リズムが変調される感覚です。

阪元監督の脚本には、アクションシーンにもキャラクターの感情の動き、心理状況がト書き(脚本に書かれている、人物の動作や行動、心情などを指示する部分)でたくさん書かれていると伺いましたが、それは珍しいことなのでしょうか?

ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ

池松アクション作品を多くやってきたわけではないのであれですが、知る限りでは珍しいんじゃないかと思います。結構、長く詳細に書かれていました。動きというよりも心理的な動きが。

伊澤きっと、多くのアクションシーンって、例えば「2対1で戦って、最後に蹴りで動きを封じる」とか、そういう描写がト書きで書いてあるイメージなんですけど、阪元さんの脚本にはその人物の感情の流れが書いてあって、それをもとに園村さんが動きを考えて、アクションだけで見せるシーンにしてくれるというか。

単純な戦いのシークエンスじゃなくて、その戦いの中でどう私たちの心が動くか、ということを園村さんはいつも考えてくださるんです。

髙石最後の戦いでの、ちさとがまひろを守るためにとった動きも、園村さんが考えたんじゃないかと。稽古場で見て私、まじか…って思いました(笑)。

アクションで物語を作ってるというか、すごく大事なキーをアクションで見せるんですよね。

ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ

二度も映画の続編が作られ、9月4日からは地上波での連続ドラマ『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』もスタートするなど、急速に人気が広がってきた「ベイビーわるきゅーれ」シリーズですが、反響が増えて規模が大きくなっても、作品の軸にあるオリジナリティや魅力がひとつも失われることなく、むしろ強固になっているのは、阪元監督と園村さんを軸としたチームの一人一人が誰よりもこの作品に対する熱量を持っているからなんですね。

髙石そういえば、1作目の初号試写の時は、誰も笑ってない中、私と伊澤さんだけ笑って観てましたよね。

伊澤うん。私たちの笑い声しか響いてなくて。

髙石でも、2作目の試写では多くの人が自然と笑ってたし、3作目なんてみんなの笑い声がすごくて。劇場がアットホームな空間に感じられて、嬉しかったです。

自分で言うのも変ですけど、「ベイビーわるきゅーれ」が作品として確立されてきたからこそ?…なのかな?って。

伊澤キャタクターも定着してきたからこそ?みたいな。

池松「ベイビーわるきゅーれ」の世界は1作目から仕上がっていましたが、さらに年月と経験を味方につけているからこそのものが映っていると感じます。

ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ

池松阪元さんのセンスと才能、アクションシーンのハンドリングをあれだけ預けられる懐、俳優の個を信じ、愛情深く冷静に、伸び伸びと良いものを引き出すデリカシーのある演出。それから園村さんの圧倒的な力。でも、それだけじゃ決してこの作品はなしえません。

やっぱり“ちさととまひろ”、この二人ですよね。

髙石・伊澤(池松さんを見る)!

池松主演俳優二人での、あれだけ本格的なアクションというのは、まず成立しないと思います。今作は、阪元さんがいて、園村さんがいて、優秀なスタッフがいて、そこにあまりに高いレベルで応え、スクリーンの中で引っ張っていける“髙石さんと伊澤さん”二人がいるから。

他の作品では真似できないことだと思います。

ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ

髙石あかり、伊澤彩織、池松壮亮の「心の一本」の映画

最後に、みなさんの「心の一本」の映画についてお伺いできたら嬉しいです。

伊澤心の一本…最近観た映画でもいいですか?

池松今浮かぶもの、ありますか?

伊澤『インサイド・ヘッド2』(2024)です。

髙石あぁー!! まだ観られてない。

伊澤私自身、楽しかった記憶すらも悲しいことに変換しちゃう癖があって。だから、観てて「私やん」って思いました。

髙石え、どのキャラクターですか?

伊澤全部。主人公のライリーが13歳になって、「シンパイ」っていうキャラクターが出てきたり、いろんな感情がまた増えるの。

『インサイド・ヘッド2』は、高校の入学という人生の転機を控えたライリーの心の中で現われる「大人の感情」によって巻き起る感情の嵐を経て、自分らしさを取り戻していく姿を描いた作品ですね。「私だ」と感じたというのは、当時の自分ではなく、今現在の伊澤さんが重なったんですか?

伊澤今です…! 私の脳みその中はこうなっているんだって、可視化されました。

ケルシー・マン監督はこの映画について、「ダメなところも含めて、自分自身を受け入れることをテーマにしている」とコメントしていましたね。

伊澤うん、すごく感情の整理になった映画でしたね。本当に…みんな観るべき。

髙石『インサイド・ヘッド』の1作目は観たので、2作目も観ます!

伊澤ボロ泣きするよ、きっと。そういえば私、『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイス』でも、観ててめちゃくちゃ泣いちゃったけど。

池松そうだったんだ。

髙石私も泣いちゃいました。

髙石さんの、心の一本はいかがですか?

髙石最近観た映画なんですけど、『オッペンハイマー』(2023)です。

クリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』は、世界初の原子爆弾を開発し、“原爆の父”としても知られる理論物理学者、ロバート・オッペンハイマーの生涯を描いた作品ですね。第96回アカデミー賞では、作品賞や監督賞を含む最多7部門を受賞し、日本と関係が深い出来事と人物を描いていることもあり、大変話題になりました。

髙石これまでは、「あ、お芝居素敵」とか、自分の感情とは離れた別の目線で映画を観ることが多くて、フィクションとして映画を捉えてる感覚だったんですけど、『オッペンハイマー』は、観ている間ずっと「悔しい」という感情が湧きあがり続けて。

伊澤内容に対して?

髙石何だろう…映画の中の人物になったかのような気持ちになっちゃって。当事者になってた。悔しすぎて、「絶対泣いてやんない!」とか思ってました。

これはフィクションだ、と思って一旦落ち着くんですけど、その2分後にはまた「悔しいー!」となって(笑)。初めての感情でした。映画で心を動かされるって言葉がよくありますけど、これかって。

剥き出しの自分が引き出された、みたいな感覚なんでしょうか。

髙石確かにそうかもしれません。普段の私は、感情が豊かというよりはどこか希薄な部分があるんですけど、感情がそのまま出てきちゃって。自分自身が引き出されたという感覚がありました。

では、最後に池松さんお願いします。池松さんには、これまでにも3度、インタビューの最後にそれぞれのテーマに沿った映画を挙げていただいているのですが…。

池松そうですね…僕は、最近の一本じゃないんですけど、『ある用務員』(2020)っていう映画がありまして。

髙石えっ!

伊澤そっち行くんですね(笑)。

『ある用務員』は、暗殺者という裏の顔を持つ用務員の戦いを描いた、阪元監督のクライムアクション作品ですね。数多くの殺し屋が登場しますが、女子高生の殺し屋コンビとして、髙石さんと伊澤さんが出演されています。

池松あれって、『ベイビーわるきゅーれ』より前の撮影だよね?

伊澤はい。

当時、伊澤さんはスタントパフォーマーとして活躍されていて、セリフのある役は『ある用務員』が初めてだったそうですね。阪元監督もあの殺し屋コンビを気に入って、撮影終了の2ヶ月後には、二人を主演にした『ベイビーわるきゅーれ』の企画を考え始めたと。

池松『ベイビーわるきゅーれ』前夜ですよね。作品としても素晴らしく。僕は1作目2作目を観た後に拝見して、二人が登場するシーンは短いながらに、あの時点ですでに二人のバディに圧倒的に場を支配するような力があるんです。

髙石嬉しい…。

池松バディが誕生した瞬間の、全能感がすごいなと思いました。並ぶだけでここまで高め合えるバディというのは、なかなかいないなと改めて感じることができます。

ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ
FEATURED FILM
監督・脚本:阪元裕吾
出演:髙石あかり、伊澤彩織、水石亜飛夢、中井友望/前田敦子/池松壮亮
音楽:SUPA LOVE
アクション監督:園村健介
配給:渋谷プロダクション
2024年|日本|カラー|シネスコ|112分|5.1ch

2024年9月27日(金)より、新宿ピカデリーほか全国公開

公式サイト:babywalkure-nicedays.com
Instagram:https://www.instagram.com/babywalkure/
X:https://x.com/babywalkure2021
TikTok:https://www.tiktok.com/@babywalkure.official
(c)2024「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」製作委員会
殺し屋協会に所属するプロの殺し屋コンビ、杉本ちさと(髙石あかり)と深川まひろ(伊澤彩織)が宮崎県に出張。到着早々ミッションをこなし、バカンス気分を満喫していたが、ちさとはとあることに気づく。今日は相棒まひろの誕生日、しかしこの後は次の殺しの予定が入っていてプレゼントを用意する暇もない! 内心の焦りを隠しつつ、ターゲットがいる宮崎県庁に向かう。チンピラを一人消すだけの簡単な仕事のはずが、指定された場所にいたのはターゲットに銃を向けている謎の男。この男の正体は一匹狼の殺し屋、冬村かえで(池松壮亮)。150人殺しの達成を目指す“史上最強の敵”が、ちさととまひろを絶体絶命のピンチに追い詰めるのだった・・・。
PROFILE
俳優
髙石あかり
Akari Takaishi
2002年12月19日生まれ、宮崎県出身。
2019年に女優活動を本格化。その後も映画をはじめ、数々のテレビドラマへの出演を重ねている。
2021年の映画初主演作『ベイビーわるきゅーれ』(阪元裕吾監督)が大ヒット。2023年には、『わたしの幸せな結婚』(塚原あゆ子監督)、『ベイビーわるきゅーれ2 ベイビー』(阪元裕吾監督)などでの演技が評価され第15回TAMA映画賞最優秀新進女優賞を受賞。近年の主な作品は、『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』(24/小林啓一監督)、声優として参加した『きみの色』(24/山田尚子監督)がある。映画『スマホを落としただけなのに 最終章 ファイナルハッキングゲーム』(11月1日/中田秀夫監督)、『私にふさわしいホテル』(12月27日/堤幸彦監督)の公開を控えている。
俳優・スタントパフォーマー
伊澤沙織
Saori Izawa
1994年2月16日生まれ、埼玉県出身。
日本大学芸術学部映画学科に入学後、映画『RE:BORN』(17/下村勇二監督)の研修生オーディションに合格し、アクショントレーニングを開始。アクション部として『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』(共に 21/大友啓史監督)、『ジョン・ウィック:コンセクエンス』(23/チャド・スタエルスキ監督)などでスタントを務める他、ゲーム『祇:Path of the goddess』(24)ではアクションコーディネーターを務めるなど多方面で活動中。
『ある用務員』(21/阪元裕吾監督)で俳優デビューし、『ベイビーわるきゅーれ』(21)で第31回日本映画批評家大賞新人女優賞(小森和子賞)を受賞。『ベイビーわるきゅーれ2 ベイビー』(23/共に阪元裕吾監督)や『オカムロさん』(22/松野友喜人監督)、『ネメシス 黄金螺旋の謎』(23/入江悠監督)、『almostpeople』【長女のはなし】(23/石井岳龍監督)などに出演している。
俳優
池松壮亮
Sosuke Ikematsu
1990年生まれ、福岡県出身。
2003年トム・クルーズ主演の『ラスト サムライ』でデビュー。2014年には、『紙の月』(吉田大八監督)、『愛の渦』(三浦大輔監督)、『ぼくたちの家族』(石井裕也監督)と注目を集めた作品に次々と出演し、ブルーリボン賞助演男優賞ほか多数の映画賞を受賞。その後も数多くの作品で、多数の映画賞を受賞している。
近年の主な出演作に、『海よりもまだ深く』(16/是枝裕和監督)、『永い言い訳』(16/西川美和監督)、『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』(17/石井裕也監督)、『万引き家族』(18/是枝裕和監督)、『斬、』(18/塚本晋也監督)、『宮本から君へ』(19/真利子哲也監督)、『ちょっと思い出しただけ』(22/松居大悟監督)、『シン・仮面ライダー』(23/庵野秀明監督)、『せかいのおきく』(23/阪本順治監督)、『白鍵と黒鍵の間に』(23/冨永昌敬監督)、『ぼくのお日さま』(24/奥山大史監督)他。日本映画界に欠かせない俳優である。待機作に2024年11月8日公開予定の映画『本心』(石井裕也監督)などがある。
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