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そんな憧れのような「なりたい自分」に近づくことはできるのでしょうか?
「なりたい自分」を想像する力が強すぎる!
― 映画『私がモテてどうすんだ』の主人公・花依はアニメとBL(ボーイズラブ)大好きの女子高生です。彼女が妄想の対象とする学校のイケメン4人はそれぞれキャラクターが際立っていて面白いですよね。「スポーツ系の同級生」五十嵐祐輔、「チャラい系の同級生」七島希、「ツンデレ系の後輩」四ノ宮隼人、そして吉野さんが演じられた「サブカル系先輩」六見遊馬(むつみあすま)。吉野さんご自身は、どのタイプに一番近いと感じましたか?
吉野 : う~ん、そうですね……。「チャラい系」の七島役以外で迷っていて。
― まず、「チャラい系」ではない。
吉野 : そういうタイプではないですね(笑)。自分は、どのタイプに近いだろうと、ずっと思ってたんですけど…五十嵐タイプかもしれないです。
― 4人の中では、一番硬派な人物ですね。
吉野 : 性格的に真っ直ぐで、まずは自分の思いを真っ先に相手へ伝えるところがかっこいいなぁと。…これ、僕ですね(笑)。
― (笑)。吉野さんも、自分の思いを相手へ真っ直ぐ伝えると。
吉野 : はい。もう、すぐに。
― 吉野さんが演じた「六見遊馬」も、真っ直ぐに人を見ている人物でしたね。花依の外見が変わっても、一人だけ接し方が変わらず、BL好きが4人にバレた時も、「好きなことがあるのはいいことなんじゃないの?」と声をかけていました。
吉野 : 一言一言に「あぁその通りだな」って思えることがあるのもいいなって思いましたね。「自分が決めなきゃいけないんだよ」とか。
― 言葉数は少ないけれど、その分、一言一言が深く響くと。
吉野 : 遊馬は意外にいいこと言っているんですよ(笑)。正直何を考えてるのかよくわからないキャラクターなんですけど、どこか芯があるというか、強い部分がある。お城が大好きで、一つのことに対して、熱中できるタイプですよね。
― 吉野さんご自身が、今熱中していることはありますか?
吉野 : 韓国ドラマを見たことがきっかけとなって、今、韓国のエンタテインメントに興味があります。韓国は、音楽もお芝居もすごく発展していて、表現力が豊かな方が沢山いらっしゃるんだと、改めて気づかされました。だから、もっと海外の作品も見て、外国語も勉強していきたいなぁって思っていて…最近、韓国語を勉強し始めたんです。
― 一度ハマると、とことん追求したくなるタイプですか!?
吉野 : 僕の場合、一度ハマると大変です。そのうち韓国からもオファーが来るかもしれませんし…(笑)。実は、中国語もちょっとやっていて……。
― 中国語も!
吉野 : 難しすぎて一旦離れた時期があったんですけど、今もう一度挑戦しています。英語、韓国語、中国語は、ちゃんとマスターしたいなぁと思っているんです。
― その「強い挑戦への思い」は、どこから湧き上がってくるんですか?
吉野 : きっと「こうなりたい!」っていう気持ちが強すぎるんだと思います。「もし違う言語がしゃべれたら、今よりもっと可能性が広がるし、もっとやりたいことに近づけるはず!」と、“その先に辿り着いた自分の姿”を想像しちゃんうんですよね。
「なりたい自分」を問い直す。
それが挑戦への熱になる!
― 「こうなりたい!」という自分を妄想する気持ちが強いということでしたが、そこに近づくために、日頃意識していることはありますか?
吉野 : なるべく定期的に頭の中を整理して、「なりたい自分」のイメージを見直すようにしています。そうすることで、また自然とやる気が湧いてくるというか、モチベーションのアップにもつながる気がするんですよね。
― 「なりたい自分」のイメージを見直すようになったきっかけは、何かあったのですか?
吉野 : きっかけというほどの、きっかけはなかったんです。小学校の頃、バスケ部の監督から「お前は芸能人になれ!」って言われたことがずっと頭の片隅に残っていて。もともとそういう存在に憧れはあったので。
― 吉野さんは小学生から高校生までの間、ずっとバスケ部に所属し、小・中学生の頃には県大会で優勝も経験されているんですよね。
吉野 : そうです。それで、高校生になってから「自分もこんなふうになりたい」と憧れるアーティストさんに出会い、本格的に目指すようになりました。そこからオーディションを受けたり、人前で歌ったりし始めたんです。
― 「なりたい自分」を思い描くということが、初心に戻ることでもあると。吉野さんは、2014年4月「VOCAL BATTLE AUDITION 4」に合格し、その9月にTHE RAMPAGE from EXILE TRIBEの正式メンバーとなりました。夢を実現させるために、吉野さんが大切にしてきたことはありますか?
吉野 : なんだろう……? あきらめないこと、ですかね。バスケも歌も「あぁ、もうやめようかな」って思ったことはありました。壁にぶつかっても、そこで踏ん張ったからこそ、バスケも小・中学校時代に県大会で1位をとれましたし、歌うこともTHE RAMPAGE from EXILE TRIBEのメンバーとしてデビューでき、アリーナツアーも行えるようになりました。
― 壁にぶつかっても、あきらめないということは、とても難しいと思うのですが、どう乗り越えているのでしょうか?
吉野 : 夢って、自分だけのものじゃないというか…。夢を目指す自分を、応援してくれる人たちがいる。その人たちを悲しませたくない。特にいつも一番近くで支えてくれている家族に対して、そういう思いが強かったから、「もうちょっと頑張ってみよう!」って踏ん張れたような気がしています。「夢は自分だけのもの」という考えだったら、もしかしたら危なかったかもしれないです。
― 定期的に「なりたい自分」を見直すということでしたが、コロナ禍のステイホームが推奨されている期間中も、そういう時間はとられましたか?
吉野 : もう、すごく考えました。たとえば……、「ファンの方たちは、どういう自分のパフォーマンスが見たいんだろう?」ということを改めて考えました。自分たちの活動を振り返ったり、映像におさめられたものを見直したり。
吉野 : そういう客観的に自分の姿を見るところから始めて、その後はもう、ひたすらインプットの日々ですね。映画、ドラマ、海外アーティストのパフォーマンス、オーディション番組とか、手あたり次第に見漁って、全部エネルギーに変えていった感じです。それで「これをやりたい!」っていう熱をキープしていたというか……。
― いろんな作品に触れることで、自分の熱を持続させたんですね。
吉野 : やっぱり、2カ月、3カ月とずっと家の中にいたので、いざパフォーマンスするとなった時にちょっと怖くなってしまうような気がしたんです。だから、自分の中の情熱というか、熱を絶やさないためにも「こういう風になりたい」というイメージを、日々インプットして。だから、ずっと映画を観てました!
― ステイホーム期間中、自分と向き合えるような映画との出会いはありました?
吉野 : とにかくいろんなジャンルの映画を観ていって、どれもすごいいい作品ばかりだっったんで…。うーん……。あ、でも今の自分に刺さったっていうか、「素敵だなぁ」って思ったのは、『マイ・インターン』(2015)です。
― 名優ロバート・デニーロとアン・ハサウェイの共演で話題になった作品ですね。アン・ハサウェイ演じる主人公・ジュールズがCEOを務めるファッション通販会社に、ある日デニーロ扮するベンが、シニアインターンとしてやってきて、年齢も性別も地位も価値観すらまったく異なる男女が、壁を越えて友情を育んでいく、という……。
吉野 : 人って、何かを一生懸命している時が、一番輝いて見えるじゃないですか。そんなことを改めて感じさせてもらったというか、「いくつになっても挑戦できるんだ!」って、勇気をもらえた作品でしたね。でも、そういう映画は『マイ・インターン』だけでなく、他にもまだまだいっぱいありましたよ(笑)。
― どんな作品ですか(笑)?
吉野 : 『最強のふたり』(2011)もいい映画でした!
― 不慮の事故で車いす生活になってしまった大富豪と、介護者として雇われた黒人の青年が、垣根を越えて心を通わせていく、実話をもとにしたフランス映画ですね。世界各国で大ヒットを記録して、『THE UPSIDE 最強のふたり』という邦題で、ハリウッドリメイク版も製作されました。
吉野 : 偉いとか、偉くないとか、そういうのは一切関係なしに、あくまで、人へ「人」として接している。この映画は、互いに無理せず心から一緒に居たいと思える人と一緒に過ごすっていう、人生のパートナーに出会う作品じゃないですか。そういうところが今の自分にも通ずる、というか学べるところがあって。
― ご自身の活動にも、通ずるところがあるということですか?
吉野 : 「もっとこんな風にやらなきゃいけないんじゃないか」とか「これをやったら、こうなるんじゃないか……」みたいに、つい周りの目を気にしちゃうこともあると思うんですけど、「もっと自分の人生を楽しんでもいいんだな」って、素直に思えました。あまり深く考えこまずに、やりたいと思ったことや好きなことを、もっと気楽に試してみてもいいんじゃないかなって。
吉野 : もちろん、いざ何かをみんなでやるときは、まとまりも必要ですが、それと同時に自分のやりたいことを表現していくことも必要だと感じました。人に左右される人生は、結局後で後悔するんじゃないかなと。そういう、しがらみのない人生が……って、ちょっと、自分でも、この話をどこに着地させていいのか、よくわからなくなってきたんですけど(笑)。
― (笑)。ステイホーム期間中に観た映画が、ご自身の活動から人生までに通じていたことが、とてもよくわかりました。『マイ・インターン』や『最強のふたり』など、普段吉野さんが観る映画はどんな基準で選ばれるんですか?
吉野 : そう言われると、なんだろうなぁ。タイトルとか。勘ですかね……? 作品全体から伝わってくる雰囲気というか。予告を観て「この作品すごく良さそうだなぁ」って。本当、直感ですね。
― 「いまの吉野さんの気分とマッチした作品」ということでしょうか。
吉野 : そうですね。割と「人と人とのつながり」や「人としてどうあるべきか」をテーマにした作品を好んで観ているような気がします。黒人のジャズピアニストとイタリア系の運転手の交流を描いた『グリーンブック』も好きでしたし。…改めて考えてみると、全部通じているような気がしますね(笑)。
◎『私がモテてどうすんだ』原作本