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いつだって、どんな時だって、
自分を肯定してくれる場所
― 小林さんは、本作が映画初出演となったそうですね。オーディションで勝ち取ったと伺いました。
小林 : はい。でも、オーディションの時は合否関係なく、この場に居させて頂くことが貴重だと思ったので、今、わたしができることを精一杯やりきりました。
― 小林さんは、櫻坂46としてだけでなく、ファッション雑誌『with』の専属モデルとしても活躍、テレビドラマでは俳優としても出演されています。映画は初となりますが、決定後、いざ現場に立ってみていかがでしたか?
小林 : ご一緒させて頂いた出演者のみなさまが、素晴らしい俳優の方々ばかりでしたので、場の空気に呑み込まれてはいけないと自分に言い聞かせて、踏ん張りました。
― 物語の中心となる長谷川家の次男を北村匠海さん、末っ子を小松菜奈さん、長男を吉沢亮さん、その両親を寺島しのぶさん、永瀬正敏さんが演じていますね。小林さん演じるカオルは長谷川家の人々と、末っ子・美貴を通して関わります。美貴とカオルは、同じバスケ部に所属している親友で、二人が試合でシュートを決めるシーンなど抜群のコンビネーションが印象的でした。
小林 : 実は私、球技が苦手なんです。だから、撮影期間中はボールを借りて、家でもずっと触っているようにしていました。
― そうだったんですね。
小林 : あのシーンは、美貴とカオルの二人の距離感を感じられる大事な場面のひとつだと思ったんです。“二人の世界が現れている”とも感じたので、大切に演じました。
― カオルはサバサバした性格で、友達のいなかった美貴とも親しくなっていきます。
小林 : カオルは芯が強くて、自分の気持ちを大切にしています。そして、その事を言葉にして周りに伝えられる人なんです。自分で演じていて、すごくかっこいいなと思いましたし、その芯の強さを表現したいなと思っていました。
― 二人の卒業式のシーンでは、証書授与の際、カオルが壇上にあるマイクを奪って、みんなの前であることを打ち明けるとても印象的な場面がありました。
小林 : あのシーンは、カオルの芯の強さや気持ちが一番表れているところだと思ったので、それが伝わるよう強く意識しました。結構、長いセリフなんですけど、最初から最後までカットをかけずに撮影したんです。
― 欅坂46のラストシングル「誰がその鐘を鳴らすのか?」でも、冒頭小林さんの独白がありますね。
小林 : これまで欅坂46の楽曲を通して伝えてきたことと、カオルが発する言葉には重なる部分がたくさんあったので、今回もそういう言葉を大切に伝えられたらいいなと思って演じていました。
― 重なる部分とは、どんな部分でしょう?
小林 : 「自分らしく」っていうことです。
― 例えば、欅坂46のデビューシングルとなった「サイレントマジョリティー」には「君は君らしく生きていく自由があるんだ」という印象的なフレーズがあります。
小林 : 「自分らしさを隠さず、さらけ出す」これまで欅坂46で伝えてきたことを、今回は私自身がカオルという役に寄り添って、表現できたらいいなと。
大勢の前に立って何かを表現するということは、学生時代の吹奏楽や軽音楽の部活動、欅坂や櫻坂46の活動でも経験してきたことだったので、これまでの自分の表現の延長線上に、カオルという役もあったように思います。
― 卒業式の場面も印象的ですが、その表情と対照的な、長谷川家に混ざって一緒に夕食を食べているほころんだ笑顔も、“カオル”という人物をよく表していましたね。
小林 : あのシーンは、たしかクランクインしてからそんなに時間が経っていない時に撮影をしたんですけど、「長谷川家」という空気がすでに作り上げられているのを肌で感じて、「すごい!」と思ったのを覚えています。
― 長谷川家には愛犬の“サクラ”をはじめ、記念写真やギョウザ、そして愛の結晶である子ども達など、様々な愛の象徴が散りばめられていました。小林さんが“愛”と聞いて、思い浮かべるものはありますか?
小林 : やっぱり家族です。実家は私にとって、いつまでも落ち着く場所です。家族のいる実家に帰ると、この愛に支えられていることを実感して、「私はここで育ってきたんだな」と感じます。
― 特にどんな時、支えられていると感じますか。
小林 : 私の家族は、自分がどんなことを伝えても、いつも否定せずに受け入れてくれるんです。そういう“どんな時も自分を肯定してくれる”一番の存在が、私にとっては家族なんだと思います。
小林由依の「心の一本」の映画
― 小林さんが「愛」と聞いて、思い浮かぶのは家族ということでしたが、映画ではいかがでしょう。
小林 : 『愛唄 ―約束のナクヒト―』(2018)ですね。
― GReeeeNの「愛唄」という曲をモチーフにした青春ラブストーリーで、『キセキ ーあの日のソビトー』(2017)に続く、GReeeeNの楽曲映画化プロジェクト第2弾となり、GReeeeN自ら脚本に参加し、彼らの実話をもとにしている作品です。即答でしたね!
小林 : 私は、この作品の「恋愛」の愛というよりは、主人公の透(横浜流星)と凪(清原果耶)が自身の病気と向き合っていく過程で、それぞれの大切なものに気付いていく、その「愛」に惹かれました。
― 作品の中では恋愛だけでなく、家族や友情など、様々な愛の形が描かれています。
小林 : すごく切ない愛も描かれていて。外出が困難になってしまうほど病気が進行してしまった凪を、母親(富田靖子)が、外に行かせてあげたいという思いを押し殺して、家から出させないようにするという姿は、すごく響きました…。親として子どもを守るための行動なんですけど、その苦しみを想像すると辛かったです。
― 小林さんも、グループとして活動しているので、自分の意思とは別の選択をしなければならないという経験があるのではないでしょうか。
小林 : そうですね。そこにいる人の数だけ、色々な考え方があるので、意見が食い違うこともあります。もちろん、自分が進みたいという方向とは、別の方向に進むこともありました。だから、葛藤を感じることはあります。
― そういう時、どう乗り越えているのですか?
小林 : 自分なりの正解っていうのを見つけて、起きたことを前向きに捉えようという意識を持つようにしています。
― そう意識するようになったのには、何かきっかけがあったのでしょうか。
小林 : きっかけという、きっかけは思い出せないんですが…でも元々、簡単に物事を諦めたくない性格なので、絶対に前を向いていたいなっていうのはあります。何があっても、投げやりにはなりたくない。何でもちゃんと最後までやり遂げたい。それは、いつも思っていることですね。