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映画の言葉『ミステリと言う勿れ』久能整のセリフより

「弱くて当たり前だと 誰もが 思えたらいい」

ミステリと言う勿れ
©︎田村由美/小学館 ©︎2023 フジテレビジョン 小学館 TopCoat 東宝 FNS27社
映画の中の何気ない台詞が、
あなたにとっての特別な“言葉”となり、
世界を広げ、人生をちょっと豊かにしてくれるかもしれない。
そんな、映画の中の言葉を紹介します。

弱くて当たり前だと
誰もが 思えたらいい

By 久能整

『ミステリと言う勿れ』より

「弱い者は負けで 壊れないのが正しい」
そんな根性論はもう古いと思いながらも、いざ自身が辛い状況になった時、忍耐強く我慢することを選択していませんか?

『ミステリと言う勿れ』の主人公・久能整くのうととのう(菅田将暉)は、天然パーマがトレードマークで友達も彼女もいない大学生。淡々とした喋りが特徴ですが、膨大な知識と鋭い感性に基づくお喋りで、周りにいる人の悩みを解いていきます。

整は美術展のために訪れた広島で、一人の女子高生・狩集汐路かりあつまりしおじ(原菜乃華)と出会います。ある事件から整が気にかけている犬堂我路いぬどうがろ(永山瑛太)の知り合いだという彼女は、「バイトしませんか お金と命がかかっている マジです」と、とあるアルバイトの依頼を整に持ちかけます。そのことをきっかけに、彼女の祖父の遺言書の開示に立ち会うことになった整は、「狩集家」の莫大な遺産相続を巡る壮絶な争いに巻き込まれていくのです。

先祖代々、遺産相続のたびに死人が出ているという「狩集家に隠された真実」を紐解いていくなかで、整は、汐路の周りにいる人の表情を常に伺い、過剰に気を配る姿が気にかかります。一見強気に見えるのに、何かを「怖がっている」。その背景には、遺産相続を巡る子供の頃からの経験や記憶があったのでした。

「弱くて当たり前だと 誰もが 思えたらいい」

これは、整が汐路に伝えた言葉です。日本では「弱いものは負け」とする風潮が強く、「壊れたら退場」という“当たり前”がある一方、アメリカでは人の弱さを認め、病むことも倒れることも“当たり前”としていると。だからカウンセリングが普及しているのだと解きます。

人は弱いのが当たり前だから治そうと思う、修復できると信じることができるという整の言葉は、「我慢を美徳」とする考えが、「弱さを認めない」社会へつながっていることに気づかせてくれます。

いつだって失敗は許されず、失敗することは恥ずかしいと、自分に暗示をかけてしまっていることがあるかもしれません。でも、弱いことが “当たり前”なら、もっと自分や他人のことを許すことができるはず。

整のように、 “当たり前”への「違和感」を見過ごさないことが、誰もがより生きやすい社会をつくる一歩となるのかもしれません。

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INFORMATION
『ミステリと言う勿れ』
監督:松山博昭
原作:田村由美「ミステリと言う勿れ」(小学館「月刊フラワーズ」連載中)
出演:菅田将暉
松下洸平 町田啓太 原菜乃華 萩原利久 柴咲コウ
配給:東宝
©︎田村由美/小学館 ©︎2023 フジテレビジョン 小学館 TopCoat 東宝 FNS27社
天然パーマでおしゃべりな大学生・久能整(菅田将暉)は、美術展のために広島を訪れていた。そこで、犬堂我路(永山瑛太)の知り合いだという一人の女子高生・狩集汐路(原菜乃華)と出会う。「バイトしませんか。お金と命がかかっている。マジです。」そう言って汐路は、とあるバイトを整に持ちかける。それは、狩集家の莫大な遺産相続を巡るものだった。当主の孫にあたる、汐路、狩集理紀之助(町田啓太)、波々壁新音(萩原利久)、赤峰(柴咲コウ)の4人の相続候補者たちと狩集家の顧問弁護士の孫・車坂朝晴(松下洸平)は、遺言書に書かれた「それぞれの蔵においてあるべきものをあるべき所へ過不足なくせよ」というお題に従い、遺産を手にすべく、謎を解いていく。ただし先祖代々続く、この遺産相続はいわくつきで、その度に死人が出ている。汐路の父親も8年前に、他の候補者たちと自動車事故で死亡していたのだった…
次第に紐解かれていく遺産相続に隠された<真実>。
そしてそこには世代を超えて受け継がれる一族の<闇と秘密>があった――― 。
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