PINTSCOPE(ピントスコープ) 心に一本の映画があれば PINTSCOPE(ピントスコープ) 心に一本の映画があれば

映画の言葉『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』ササポンのセリフより

「とりあえずゆっくりして。適当に、ね」

『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』(つんドル)
©2023「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」製作委員会
映画の中の何気ない台詞が、
あなたにとっての特別な“言葉”となり、
世界を広げ、人生をちょっと豊かにしてくれるかもしれない。
そんな、映画の中の言葉を紹介します。

とりあえずゆっくりして。
適当に、ね

By ササポン

『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』より

私は、8年前にテレビ局を辞めて関西に引っ越して来ました。熟考し納得した上での行動でしたが、今でもメディアに出てバリバリ活躍していたり、東京で優雅に暮らしていたりする友人をインスタグラムなどで目にすると、心がチクリとすることがあります。あなたはどうですか?

アラサーの安希子(深川麻衣)は元アイドル。引退後もそれなりに華やかな職場で働いていましたが、知らず知らずのうちに心が疲弊してしまい離職を余儀なくされます。細々とライター業は続けているものの貯金は底をつきそうで……という状況の中、友人の紹介で一軒家のシェアハウスに引っ越すことに。そこにいたのは、普通のおじさんのササポン(井浦新)でした。

「とりあえずゆっくりして。適当に、ね」

安希子が引っ越してきた日、彼女の言い訳めいた自分語りを一通り聞いた後、ササポンはこう声をかけました。周囲と自分とを比較しながら、理想の自分の姿と現実とのギャップを受け入れられないでいた安希子。勝手に作り上げた「あるべき自分の姿」に焦りを感じてしまう安希子の姿に、自分を重ねてしまう方は多いでしょう。そう、私のように。

何もプレッシャーがないササポンとの生活は、まるで時間が止まっているようです。焦らず、ゆっくり、適当に。焦りから解放された居場所を手に入れ、いったん立ち止まることができた安希子は、少しずつ自分だけの歩幅を見つけていくことになります。

SNSによってキラキラした他人の動向が常に目に入ってきてしまう現代では、誰もが多少なりとも安希子のような焦りを感じているのではないでしょうか。心の疲れを感じているなら、とりあえず映画館に入って、ゆっくりと本作を観てみることをおすすめします。

↓今すぐ原作を読む!

人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした

PINTSCOPEでは毎月「映画の言葉」をお届けしています。
ぜひ、X公式アカウントをフォローして「心の一本」を見つけに来てください。

BACK NUMBER
INFORMATION
『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』
出演:深川麻衣
松浦りょう 柳ゆり菜 猪塚健太 三宅亮輔 森高愛 /河井青葉 柳憂怜
井浦新
原作:大木亜希子「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」(祥伝社刊)
主題歌:ねぐせ。「サンデーモーニング」
音楽:Babi
脚本:坪田文
監督:穐山茉由
製作:竹澤浩 繁田光平 
企画:宇田川寧 
プロデューサー:金山 田口雄介
音楽プロデュ-サー:杉田寿宏 
ラインプロデューサー:高橋輝光 
アシスタントプロデューサー:天野朋美
撮影:猪本雅三(JSC) 
照明:山本浩資 
録音:原川慎平 
美術:中川理仁 
装飾:吉村昌悟
編集:野本稔 
音響効果:大塚智子 
VFXディレクター:佐藤一輝 
スタイリスト:阿部公美
ヘアメイク:藤原玲子 
監督補:塩崎遵 
制作担当:田口大地 
キャスティング:梓菜穂子
製作幹事:KDDI 
制作プロダクション:ダブ 
配給:KDDI/日活
2023年11月3日(金)全国公開
©2023「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」製作委員会
元アイドルの安希子は、幸せで充実した人生を歩んでいると自分に言い聞かせながら、仕事もタフにこなしているつもりだったが、ある日の通勤途中、駅で足が突然動かなくなってしまう。メンタルが病んで会社を辞めた安希子は、仕事ナシ、男ナシ、残高10万円の現実にぶちあたる。そんな時、友人から勧められたのが、都内の一軒家で一人暮らしをする56歳のサラリーマン、ササポンとの同居生活。意外な提案に安希子は戸惑いながらも、まさかのおっさんとの奇妙な同居生活をスタートさせ…!?
PROFILE
映画・演劇ライター
八巻綾
Aya Yamaki
映画・演劇ライター。テレビ局にてミュージカル『フル・モンティ』や展覧会『ティム・バートン展』など、舞台・展覧会を中心としたイベントプロデューサーとして勤務した後、退職して関西に移住。八巻綾またはumisodachiの名前で映画・演劇レビューを中心にライター活動を開始。WEBサイト『めがね新聞』にてコラム【めがねと映画と舞台と】を連載中。
シェアする