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ひとり暮らしをほとんどしたことのない私には「ひとり飯」がうまく想像できません。そういえば父が亡くなって、ひとりになった母が、食事が難しいとよくこぼしていました。家族も客も多い家を切り盛りしていた母にとって大人数の料理を作ることより、たったひとり分の食事をやりくりするほうが難しかったのでしょう。料理の仕事を始めた私に「ひとり分の自炊の本を書いたらきっと売れるわよ」などと言っていました。
ふと、映画に出てくるひとり飯を思い起こしてみたところ、これが結構あるのです。そこには自由と孤独が背中合わせになった心情が現れているように感じられます。
早朝のニューヨーク5番街。大きく背中の開いたフォーマルドレスに身を包んだ主人公のホリーが、デニッシュをかじり紙コップのコーヒーを飲みながら、ティファニーのショーウインドウを眺めている……。『ティファニーで朝食を』の、あまりに有名なひとり飯のシーンです。オードリー・ヘプバーンの愛らしさが圧倒的でした。
気ままに生きながら玉の輿を狙うホリーが売れない作家ポールと織りなす王道のラブストーリーに、女性の生き方への問いかけが入り交じるのがこの作品の魅力です。田舎娘のホリーにとって、紙袋に入ったデニッシュは先進的で都会的な生き方、きらびやかな宝石は男性に頼る旧来の女性の生き方の象徴です。思い通りの生き方をしているようで、実はステレオタイプの幸せに囚われているホリー。この映画から60年以上経った今でも女性の自立はいまだに大きな課題であり、多くの女性はホリーなのです。おしゃれな店でひとり飯をしたからといって、それが自立というわけでもなさそうです。
対照的に、自由と孤独の関係を極めてシビアな目線で撮った映画が、ひとりの少女の放浪の旅を描いたアニエス・ヴァルダ監督作『冬の旅』でした。ショッキングな冒頭シーンで一気に引き込まれ、サンドリーヌ・ボネール演ずるモナから目が離せなくなります。
ヒッチハイクと野宿でさまよいながら続ける気ままな旅。カチカチのパンや盗んだチーズを齧ったり、修道院で恵んでもらったスープを扉の前で立ったままむさぼったりするひとり飯の場面に、 モナのしぶとさ、そして虚無を感じました。食べ物を恵んでもらうことや盗むことは彼女の自尊心には影響しないように見えますが、自由を求めるがゆえに出会う人との信頼関係をしっかり築くことはできません。やがてモナは、 自らが求めた自由が彼女自身に課す心の重荷と戦うことになっていきます。一夜の軒を借りた家の主人の「自由を選べば孤独になる。でも長くは続かないよ。孤独は体もむしばんでいくから」という言葉が印象的でした。
『ティファニーで朝食を』のラスト、結婚が自由への道だと思っているホリーに対して、ポールが「自分では自由だと思っているかもしれないが、実際には自分で作った檻の中にいる」という言葉をかけます。
ひとりになっても自分からは逃げられない。その人自身が心に抱える考え方や生きざまが、ひとりの時間、ひとりでの食事には反映されます。人と交わり結ぶことを前向きにとらえる人にとってはひとりの時間が束の間の自由となり、人と交わることを拒否したり、逆に寄りかかろうとするだけの人には、孤独や絶望となっていくのではないでしょうか。
いずれ自分にもやってくるかもしれない、ひとり飯。映画を観ながらいろいろなことを考えさせられました。
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かつては一般的だったファミリー像が崩れ、いまや夫婦と子どもがいる世帯の数を、一人暮らしの世帯数が上回る時代になっています。私もひとり分のスープのレシピを求められることがあるのですが、スープは煮込むため少量で作るのが案外むずかしいのです。
そんな中、レンジで手軽に作れるこのひとり分スープは、私のレシピでも大人気の一品。加熱で分離しやすい豆乳もレンジなら鍋を汚さずあたためられますし、半熟卵も上手に作れます。
レンジによって加熱時間が違うので、少なめの時間から加熱をはじめて、卵のかたまり具合を確認しましょう。卵の黄身を割って混ぜながら食べるとまろやかで栄養もたっぷり。トッピングの具材も自由です。揚げ玉やハム、ねぎ、わかめなど、いろいろな食材でお試しください。
こんな手軽なレシピをいくつかレパートリーとして持っておくことも、ひとり飯を楽しむ秘訣かもしれません。
◎映画のスープレシピ:
ひとり分でもおいしい、
レンジで作る豆乳と卵のスープ
豆乳 150~200mL(糖分のない、成分無調整のもの)
めんつゆ 大さじ1~1と1/2
好みの具(刻みねぎ、揚げ玉、桜えび、わかめ、カリカリベーコンなど)適宜
◎つくり方
- 1. 耐熱容器に卵を割り入れ、豆乳を注ぐ。
- 2. ふんわりラップをかけて、600Wで2分半前後、卵が半熟になるように加熱する。様子を見ながら少しずつかけるとよい。
- 3. レンジからとりだし、ラップをはずしてめんつゆを加える。好みの具をトッピングする。卵を割って黄身を混ぜながら食べる。
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