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11月の初め。名古屋で用事のついでに、プチ旅行として2泊することに。ならばだ! せっかくなら、名古屋で行きたかったミニシアターを、3軒すべて制覇しに行こう。ついでに、近辺の喫茶店でおいしいものも食べよう。そう決めました。
名古屋に出合ったのは大人になってからですが、今や大好きな街です。
私にとっての、名古屋の魅力。それは、「昭和の残り香がたくさん」なところ。たとえば、壁にレリーフやモザイクなどをあしらった、ディティールまでやけに凝った渋いビル。何十年来の常連さんが日々集う、あだち充の漫画にでも登場しそうなムードの喫茶店……。
映画好きにとって見逃せないのは、雰囲気あるミニシアターも残っていること。故・若松孝二監督が設立したシネマスコーレをはじめ、昭和の時代に建てられた、それぞれに個性的な佇まいの映画館が3軒も運営中なのです。
それから、「食べものがおいしい」ところ。特に好きなのはやっぱり、喫茶メニュー。たとえば映画の前後などに、ほんの30分でもさくっと楽しめますし、リーズナブルな価格にもかかわらず、お腹いっぱいになれます。
「朝行くとコーヒー一杯頼むだけで、朝食メニューがついてくる」というモーニング文化に代表されるように、とにかく気前がいいのが名古屋流。食いしん坊な人には最高の街です。ただし、カロリー過多には要注意!
若松孝二ゆかりの映画館 シネマスコーレ
午前11時、新幹線ひかりで名古屋に到着。久しぶりの名古屋駅。コンコースは通勤通学の人でごった返しています。
お目当ての映画館は、駅のすぐ近くです。上映まで時間があるので、コインロッカーに荷物を預けてから、コンコース沿いのチェーン店でコーヒーを飲みながら、しばし人間観察。東京よりコロナの感染者数が落ち着いているからか、どことなく人々の表情に東京よりも活気を感じます。
12時、駅を出発。向かうは、1983年の開館当時、若松孝二監督がオーナーを務めていた、〈シネマスコーレ〉。ここに来るのは5年ぶりで2回目です。
若松監督は、1960〜70年代にピンク映画という枠の中で、政治的な革命を叫び続けた、いわば“闘う映画監督”。2010年には『キャタピラー』で、主演の寺島しのぶさんがベルリン国際映画祭女優賞を受賞して話題になりました。しかし2012年、交通事故で急逝してしまいます。
監督の遺志は数々の作品に、そして、このシネマスコーレに継がれています。入口をくぐると、名だたる映画人によるたくさんのサインに迎えられ、この場所がいかに愛されてきたかがよくわかるのです。日本の名監督たちに混じり、なんと台湾のエドワード・ヤン監督のサインまで!
ちょうど、アレクサンドル・ソクーロフ監督特集が開催中。いつかスクリーンでぜひ観てみたいと思っていた、『エルミタージュ幻想』(2002)を観ることにしました。世界遺産に認定された、ロシア・サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館を舞台に、全編90分超を編集なしのワンカットで撮影したという異色の映画です。
この日は木曜日。平日の昼どきだから劇場内は空いていて、ほとんど座席を独占するようなかたちで、近代ロシア300年の歴史が織りなす世界へ。半ばまどろみながらも、四つの異なった時代をシームレスに行き来する、夢幻的な映画を楽しみました。
眼福の贅沢な1時間半のあと、今度はお腹を満たしに行くことに。駅を挟んで反対側の地下街にある、〈コンパル メイチカ店〉へ。コンパルはなんと1947年創業で、コーヒーとサンドイッチが名物の喫茶店です(中区大須が本店)。
迷わずオーダーしたのは、エビフライサンドとホットコーヒーのセット。このエビフライサンドは私にとって、名古屋で新幹線に乗るときに持ち込む定番フードです。
カリッと揚がった大ぶりのエビフライ3本を、キャベツのコールスローと薄焼き玉子、カツソースとタルタルソースのダブルソースを用いてトーストでサンドした、豪快な一品。なんともオイリーな旨味に、苦味のきいたコーヒーがぴったり合います。
隣の席には、ハンチングをかぶったおじさま。と思ったら、スーツを着た若い女性が後からやってきて、おじさまの向かいに座りました。話の内容からすると、どうやら娘さん。親子代々この店に通っているわけです。
シネマスコーレもコンパルも、名古屋駅からアクセスしやすく、こじんまりとした場所。気楽な隠れ家といった雰囲気で、ふらっと入れる感じがとてもいいのです。
今回のさんぽコース
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- 山陰地方唯一のミニシアターへ。 鳥取・松崎で自然とカルチャーを浴びる一日 【ジグシアター/Librarie by HAKUSEN/汽水空港/HAKUSEN】 ①
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