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ボン・ディーア!!
藪から棒にポルトガル語で失礼します。
私は2021年春からポルトガルのリスボンで生活しています。スペインの隣、ヨーロッパの最も西に位置しているポルトガル共和国の面積は日本の約4分の1。およそ1000万人が暮らしています。大航海時代から日本との繋がりも深く、共通する食べ物や言葉が多いことでも有名ですね。
穏やかで晴天が多い気候、美味しい食事、のんびりして優しい人々、驚くべき治安の良さ……良いところ満載のポルトガルには多くの観光客が訪れます。都市部に住むポルトガル人の多くが英語を話せることや、移住ビザが取りやすいということもあり、リスボンにはイギリスを筆頭に世界各国の人々が行き交っています。最近はコロナの制限も撤廃されつつあるので、さらに賑わってきました。
爽やかな気候に映えるオレンジの屋根。ポルトガルといえばそんな印象を持っている方も多いと思います。7つの丘から構成されているといわれるリスボンの街並みは高低差が激しく、若くはない肉体にはキツいと感じることもありますが(笑)、少し坂を上ると写真のような絶景をいつでも楽しむことができます。
そんな私の日々の楽しみは、やはり映画鑑賞! 吹替主流の国も多い欧州ですが、ポルトガルでは字幕上映がほとんど。言語が英語(もしくは日本語)の映画であれば、ポルトガル語が話せない私でも映画館で映画を楽しむことができます。しかも、私が住んでいる場所からはアクセスしやすい映画館が4つほどあり、大体いつも空いているというラッキーな環境! 毎週なにを観ようかとHPをチェックするのが習慣になっています。
ちょうど観たい映画が公開していたので、今回はリスボンで最も古い映画館である〈CIENEMA IDEAL〉に行ってみることにしました。
歴史ある映画館 CIENEMA IDEAL
1904年に設立されて以来、何度も名前を変えて存続してきたという〈CINEMA IDEAL〉では、ポルトガルおよびヨーロッパの作品を中心に常時4本ほどの作品を上映しています。
リスボンを代表する商業エリアChiadoと、リスボン1の酒場エリアBairro Altoの中間あたりに位置し、立地は抜群。まさに観光地ど真ん中です。映画館の前にはトラムが走っているので、こんな写真だって撮れちゃいます。
映画館はこじんまりとした落ち着いた雰囲気。まずは受付でチケットを購入します(通常チケットは7ユーロ)。
受付の横にはちょっとした売店があり、飲み物やペストリーを買うことができます。
奥に進むと左手には映画専門グッズを扱うコーナーが。ミニシアター系の作品ばかりが、ずらっと並んでいてなかなか壮観です。
「写真を撮っていいですか?」とスタッフの男性に尋ねたところ、少しビックリしつつも「もちろん! ここも撮ったら? ここもいいですよ!」と積極的に案内してくれました。ポルトガルの人々は総じて控えめで、グイグイくるタイプでは全くないのですが、何かをお願いするととても親切に対応してくれます。ちょっと日本人に似ている気がしませんか?
さらに奥に進むと、ちょっとした休憩スペースがありました。中央の柱にはポスターが貼られ、テーブルにはフリーペーパーなどがズラリ。
『ドライブ・マイ・カー』(2021)のポスターも目立つところに飾られていましたよ!(なお、3月10日に公開されて以来、リスボンのシネコンでは、この映画を観に行った4月末現在まだロングラン中です)
さて、いよいよシアターへと入っていきましょう。シアターは2階建てになっていて、ロビーの端にある階段を下りて入口へと向かいます。暗くて少し怖い……。
前方にある扉から中に入ると……ジャジャーン!
モダンでありながらシンプルなつくりのシアターになっています。スクリーンの前にはステージもあるので、ちょっとしたイベントも開催可能。設備にはジーベックス社のプロジェクター(Christie CP2215)とサウンドシステム(Christie Vive Audio)が採用されています。
さて、ようやく席につきました。本日鑑賞するのは『アフター・ラブ』(2020)。アリーム・カーン監督によるイギリス映画です。
パキスタン人で船乗りの夫と結婚し、自身も改宗した英国人女性メアリーが、亡くなった夫の別の顔を知り……というお話。急死した夫の不在を中心に、知らなかった事実や喪失の苦しみにどう向き合っていくかを描いた傑作でした。主演のジョアンナ・スカンランは、この作品の演技が評価され今年の英国アカデミー賞主演女優賞に輝いています。(※日本での公開は2022年6月現在未定)
ズーンときつつも希望を感じさせるラストの余韻に浸りながら、〈CINEMA IDEAL〉を後にします。この映画館があるのは、リスボンでも最も賑わっている地域。一歩外に出ると映画館内の静けさが嘘のようです。コロナが落ち着いてきて環境客も増えつつあるので、いつも多くの人で賑わっています。
このエリアにはショッピングモールやブティック、多くのカフェや美容院が集まっています。右側に見えている青い建物の1階には、ベルトラン書店という世界最古の書店があったり(1732年創業)、この写真の左側奥の小道を上っていくと、1755年に起きたリスボン大地震によって大部分が崩壊したまま現存しているカルモ修道院があったりと、観光地としての見どころも豊富。ブラブラと歩くだけでも飽きません。
天気が良ければ、この地区の中心部にある1905年創業の老舗カフェのア・ブラジレイラに立ち寄るのもおすすめ。常連客だった詩人フェルナンド・ペソアの銅像が目印です。カフェメニューやちょっとした食事、お酒も楽しめる空間です。外の席も人気!
しかし、この日私が訪れたのは別のお店。リスボンでは最近ジャパニーズフードが大流行中で、さまざまな和食レストランができているのですが、この地区にも重要なお店があるのです。ズバリ、〈AFURIリスボア店〉! そう、東京を中心に展開しているラーメン店AFURI(阿夫利)のリスボン店なのです。なんと、ヨーロッパでAFURIが食べられるのはリスボン店だけ。かつて恵比寿店や六本木店のヘビーユーザーだった私としては、運命を感じずにはいられない……というわけで、週1ペースで訪れています。(おそらく日本にあるラーメン店でリスボンに進出しているのはAFURIだけではないかと思います)
リスボン店の正式名称は「AFURI IZAKAYA」。ラーメンの他にも、おつまみメニューや寿司・丼ものなど和食メニューが充実しているのが特徴です。内装も広々としていてオシャレ。ラーメン屋さんというよりは、モダンな和食レストランといった風情です。
さらに平日限定メニューもあります。「MENU」というのはいわゆるセットのこと。ポルトガルでは大体のお店がランチメニューを用意していて、かなりお得だったりします。
AFURIのメニューは、好きなラーメンまたは弁当+飲み物(ビール、ワイン、スティルウォーター、スパークリングウォーターの中から選択)+コーヒーで12ユーロというもの。ラーメン単品でも12ユーロ以上なので、かなりお得なセットになっています。
今日は柚子塩ラーメンとスパークリングウォーターをチョイス。日本で食べるのと変わらぬ味に、いつも喜びを嚙みしめています。ごちそうさまでした!
さて、お腹もいっぱいになったところで、甘い物も欲しくなってきました。ポルトガルは牛乳と卵を使ったスィーツが有名で、街のいたるところで手に入れることができます。中でも特に有名なのが「パステル・デ・ナタ」と呼ばれているエッグタルト。数多くのパステル・デ・ナタ有名店が存在しているのですが、〈CINEMA IDEAL〉の真向かいにも有名店のひとつがあります。それが、こちら。
じゃん! 〈マンテイガリア〉という専門店。
リスボン市内に数店舗を展開している人気店で、週末ともなると店外まで長い行列ができます。どの店舗でもガラス越しに製造過程を見学できるようになっているのですが、こちらの店舗ではガラスケースの前にイートインスペースが用意されています(立ち食いスタイル)。私は持ち帰りで2つ注文しました。お値段は1.1ユーロ/1個。
ケースも可愛いですね。箱に刺してある袋にはシナモンパウダーが入っています。お好みでシナモンパウダーをかけて食べるのが流儀。中身はこんな感じです。
左がそのまま、右がシナモンパウダーをかけたものです。サクッと甘い中に、焦げ目がほろ苦く効いている「パステル・デ・ナタ」は病みつきになる味。お店によって個性があって大きさや味が少しずつ違うので、ポルトガルに来たら色々なお店にトライしてみることをおすすめします。
海外旅行の行程に映画館を組み入れることは、なかなかないかもしれません。でも〈CINEMA IDEAL〉のように歴史がある個性的なミニシアターならば、いつもとは違う体験ができるはず。しかも、映画館の周りはリスボン随一の観光スポット! 映画もグルメもショッピングも観光も一気に楽しめてしまいます。
リスボンは「天気よし、景色よし、食よし、人よし、危険なし」の最高に住みやすい街。今度はどの映画館に行って何を食べようかと、再びGoogle検索に耽る私なのでした。
今回のさんぽコース
PINTSCOPEでは、これからも日本各地や世界にあるミニシアターを紹介していきます!
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