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映画を観た日のアレコレ No.86

表現者
アオイヤマダの映画日記
2023年10月1日

映画を観た日のアレコレ
なかなか思うように外に出かけられなかった時を経て、今どんな風に1日を過ごしていますか? 映画を観ていますか?
何を食べ、何を思い、どんな映画を観たのか。 誰かの“映画を観た一日”を覗いてみたら、どんな風景が見えるでしょう? 日常の中に溶け込む、映画のある風景を映し出す連載「映画を観た日のアレコレ」。
86回目は、表現者 アオイヤマダさんの映画日記です。
日記の持ち主
表現者
アオイヤマダ
Aoi Yamada
2000年生まれの表現者。メディアアート集団“ダムタイプ”『2020』などに出演、東京五輪2020閉会式にソロ出演後、ヴィム・ヴェンダース監督作『Perfect Days』(23)やNetflixシリーズ『First Love 初恋』(22)に俳優として出演している。生き様パフォーマンス集団『東京QQQ(トウキョウサンキュー)』のメンバーとしても活動中。

2023年10月1日

7:30起床。
「おはよう」 今日から10月かぁ。 秋だなぁ。なのに、まだ暑い。
今朝は旦那とある映画を観ると決めていた。 『お早う』
小津安二郎の1959年の映画。
昨日の夕ごはんの残りもの、
葡萄とコーヒーをテレビの前に並べて鑑賞態勢を整える。
一息ついて、ほっ。
「おはよう!」 と再び挨拶してから再生ボタンを押す。
画面に映るのは、一戸建てがぎゅぎゅっと集まる新興住宅地。
文字で書くと普通だなぁ。
でも映像の住宅地は、
特別なセットなのか、
この時代にはよくある光景だったのか、
私には分からない。
そこに映る、登校中の少年たち。
おでこを指で押し合っている。すると、
高い効果音が鳴る。
なんの音だろう。
!
おなら!
私が効果音をつけるとしたら、

「ぷーっ」て感じだけど
「きゅい~ん」みたいな音だったから
はじめは気がつかなかった。
テレビで相撲をみたいある兄弟が 両親に英語の勉強をすると嘘をつき
お隣さんの家に行く。
弟は家を出るとき、母親に向かって
「アイラブユー」と陽気に言う。
嘘がばれて怒られる。
「余計なことを言い過ぎる!」と父親に怒鳴られる。
それに対し、
「大人のが余計なことばっかり言ってるじゃないか! お早う、今晩は、良いお天気ですね、、」そうしてその兄弟は大人と口を聞かなくなる。
子供たちのテレビみたさに、周りの大人が巻き込まれていく。。
みたいな感じかなぁ、、。
その兄弟が放った言葉について考えた。
確かに、挨拶って、なんの意味があるんだろう。
でも、身近なことでいうと、 夫婦生活の中で、ちょっとした揉めごとから
お互い黙り込んでしまったとき、
その固く縛られた紐を解いてくれるものは
「おはよう」なんだよなぁ。
そういえば、
子どもの頃、母と喧嘩した時も黙り込んで
次の朝まで堪えて
「ひらけごま!」みたいな気持ちで
「おはよう」って言っていたなぁ。
観終わって、買い物に出かけた。
野菜売り場、そして魚売り場へ。
秋刀魚が売っていた。3尾で650円。
『お早う』には、秋刀魚の干物が出ていて
兄弟が「また秋刀魚の干物か」とか言っていた。
現代では高級になってしまった。
小津安二郎映画に『秋刀魚の味』という映画があった。
次はそれを観ようと旦那と約束した。
今年初の秋刀魚を頬張りながら、
おでこをおして、おならがでて、
「アイラブユー」と言い合う。
小津安二郎さんのおかげで、穏やかな、幸せな一日を過ごすことが できました。
ありがとう、小津さん。

アオイヤマダ

BACK NUMBER
INFORMATION
『唄う六人の女』
監督・脚本・編集:石橋義正
脚本:大谷洋介
出演: 竹野内豊 山田孝之 / 水川あさみ アオイヤマダ 服部樹咲 萩原みのり 桃果 武田玲奈 大⻄信満 植木祥平 下京慶子 鈴木聖奈 津田寛治 白川和子 / 竹中直人
制作プロダクション:クープ コンチネンタルサーカスピクチャーズ
制作協力:and pictures
配給:ナカチカピクチャーズ/パルコ
10月27日(金)TOHO シネマズ日比谷他、全国ロードショー
© 2023「唄う六人の女」製作委員会
ある日突然、40年以上も会っていない父親の訃報が入り、父が遺した山を売るために生家に戻った萱島(竹野内豊)と、その土地を買いに来た開発業者の下請けの宇和島 (山田孝之) 。契約の手続きを終え、人里離れた山道を車で帰っている途中に、二人は事故に遭い気を失ってしまう……。目を覚ますと、男たちは体を縄で縛られ身動きができない。そんな彼らの前に現われたのは、この森に暮らす美しい六人の女たち。何を聞いても一切答えのない彼女たちは、彼らの前で奇妙な振る舞いを続ける。異様な地に迷い込んでしまった男たちは、この場所からの脱走を図るが……。
PROFILE
表現者
アオイヤマダ
Aoi Yamada
2000年生まれの表現者。メディアアート集団“ダムタイプ”『2020』などに出演、東京五輪2020閉会式にソロ出演後、ヴィム・ヴェンダース監督作『Perfect Days』(23)やNetflixシリーズ『First Love 初恋』(22)に俳優として出演している。生き様パフォーマンス集団『東京QQQ(トウキョウサンキュー)』のメンバーとしても活動中。
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