PINTSCOPE(ピントスコープ) 心に一本の映画があれば PINTSCOPE(ピントスコープ) 心に一本の映画があれば

映画を観た日のアレコレ No.93

タレント
でか美ちゃんの映画日記
2024年4月22日

映画を観た日のアレコレ
なかなか思うように外に出かけられなかった時を経て、今どんな風に1日を過ごしていますか? 映画を観ていますか?
何を食べ、何を思い、どんな映画を観たのか。 誰かの“映画を観た一日”を覗いてみたら、どんな風景が見えるでしょう? 日常の中に溶け込む、映画のある風景を映し出す連載「映画を観た日のアレコレ」。
93回目は、タレント でか美ちゃんさんの映画日記です。
日記の持ち主
タレント
でか美ちゃん
Dekami Chan
多方面から評価される的確なコメント力を武器に、場所を選ばず大活躍。自身の楽曲の作詞作曲やライブ活動、楽曲提供、映画出演、コラム執筆などジャンルやメディアにとらわれず活動中。
一度聞いたら忘れられない芸名で活動していたが、いろいろ考えて2021年12月に親しみやすい名前に改名。

2024年4月22日

毎週火曜お昼は赤坂にいる生活が始まって一年が経った。二年目に突入できていることが心の底から嬉しい。
昔テレビから聞こえてきた、ひどく納得した誰かの言葉を思い出す。

「ドラマやコンサートは最終回や最終日を目指していてゴールがあるけれど、バラエティは終わらないことを目指さなければならない覚悟のいるジャンルだ」

ひどく納得した割に、一言一句違わず覚えているわけでもないし誰の発言かも覚えてなくて申し訳ないのだが、当時タレントとして今より輪をかけてまだまだだった私にも響いた言葉だった。

TBSラジオのお昼の帯番組『こねくと』が始まって丸々一年。半年、一年、一年半とこれからも少しずつ積み重なっていけばいい。
メインパーソナリティーは俳優で文筆家の石山蓮華ちゃん。私は火曜パートナーで、日常のあれやこれやを話すことが当たり前になった。
他にもレギュラーで出演しているラジオ番組はあるが、時間帯の穏やかさのおかげか、蓮華ちゃんの聡明かつ素っ頓狂な人柄のおかげか、自分のありのままと何でもないことをリスナーにきいてもらう喜び、というものに出会えた。

『こねくと』では映画評論家の町山智浩さんによる映画紹介のコーナーがある。町山さんが解説してくれる作品はどれも魅力的だ。番組が始まって以降、蓮華ちゃんと私はとくに示し合わせたわけでもなく、番組や町山さんから指示されたわけでもなく、次の週までに教えてもらった作品を観て感想を伝えることが気付けば習慣になっていた。

先週町山さんが教えてくれた作品は『異人たち』。
山田太一作の小説『異人たちとの夏』の映画化だ。日本でも映画化された名作だが、イギリスで新たに映画化されたのだ。今日はこれを観に行く。

六本木ヒルズにあるTOHOシネマズを目指す。
町山さんの解説を聞く限り、今日私は多分、泣く。メイクして行っても意味がないのですっぴんで家を出た。
映画の前にひとつ用事を済ませた関係で、千代田線の乃木坂駅で降りる。乃木坂で降りても十数分ほど歩けば目的地には着く。
六本木ヒルズにすっぴんで乃木坂から歩く手段で行く。東京にも慣れたもんだなー。
三重県から上京したのは14年前の春。少しずつ積み重ねて、東京生活は15年目に突入する。

でか美ちゃんの映画日記

乃木坂駅で降りると「あれ? でか美さん?」と声をかけられた。私がバラエティに出始めてすぐの頃、よくお世話になっていたライターの方だった。彼も六本木方面に用事があるそうで、途中まで一緒に歩いた。
せっかく5年ぶりくらいに会えたのにすっぴんですよ、ああショックー、私もっと可愛いんですよーと軽口をたたきつつ思い出話に花を咲かせた。
そういや、コロナ禍に入る前にピザを食べに行く約束してましたね、と思い出す。行きましょうよ、とその時は心の底から本心で言っているが、果たして叶うかはわからない。
去り際に「あ、こねくと、聴いてますよ」と言ってくれてとても嬉しかった。

TOHOシネマズに着き、ポップコーンを頼む。どんな作品の時も出来るだけポップコーンは頼む。何となく食べてる方が上映中の尿意が遠のく気がする。フレーバーは塩にバターオイル多めしか勝たん! と言わんばかりにこれしか頼んだことがない。

『異人たち』は幼くして交通事故で両親を亡くし孤独に暮らす主人公アダムが、同じタワマンに暮らすハリーと出会い関係を深めていく中で、亡くなったはずの両親ともまた交流を持つようになるという物語。
予想通りめちゃくちゃ泣いた。すっぴんで来てよかった。音にするならエーンパターンと、ポロポロパターンの泣き方があるが、スーパーポロポロパターンだった。一番心の奥に刺さった時の泣き方。
日本版の作品も観るべく、次は大江戸線を目指してあり得ないくらい深く沈むエスカレーターに乗りながらサブスクでリストインしておく。

アダムに想いを重ねる部分もあれば、理解しきれない部分もあった。映画を毎週観るようになって共感だけが寄り添う手段ではないのだなと学んだ。
自分では選ばない作品を観る習慣。どれだけ貴重な機会を得られているのか、この一年でよく分かった。おかげで友達のおすすめもよく観に行くようになったし、人におすすめすることも増えた。
この習慣が出来るだけ長く続きますように。終わらないことを目指す覚悟のいるジャンル、をこれからも楽しくやっていこう。

そういや、ピザを食べに行く口約束の始まりはライターの方のおすすめ店という話からだった。
やっぱりそこのピザ、絶対食べたいな。食べるべきだなこれは。

明日連絡してみよ。

でか美ちゃんの映画日記
BACK NUMBER
PROFILE
タレント
でか美ちゃん
Dekami Chan
多方面から評価される的確なコメント力を武器に、場所を選ばず大活躍。自身の楽曲の作詞作曲やライブ活動、楽曲提供、映画出演、コラム執筆などジャンルやメディアにとらわれず活動中。
一度聞いたら忘れられない芸名で活動していたが、いろいろ考えて2021年12月に親しみやすい名前に改名。
FILM GALLERY
シェアする