そんな自分にとって特別な、そして誰かに語りたい映画体験記。
よく人生は旅に例えられます。かのスティーブ・ジョブズは「旅の過程にこそ価値がある」という言葉を残しました。なかなか気軽に外出できない今だからこそ、映画で世界を巡りながら、自分の人生の旅に出てみてはいかがでしょうか? そこに新たな変化へのヒントがあるかもしれませんよ!
「今振り返っても、社会人生活で一番辛い日々でした」
昨年、スポーツ業界を志す就活生に向けて、セミナー授業を担当したときに発言した言葉です。僕は現在、スポーツの魅力を伝えるメディアやアスリートをマネジメントする職に就いていますが、学生時代は就活生同様、社会人になったら、国境を越えて一体感を生み出すことのできるスポーツ業界に入って、自分の好きなことを仕事にしたいと意気込んでいる青年の一人でした。
色々な出会いやめぐり逢いのおかげで、多少の遠回りをしながらも、憧れのスポーツ業界に入社できました。それも学生時代から続けていたサッカーに特化したJリーグチームのフロントスタッフに。大きな志と根拠のない自信を胸に、活躍するイメージを持って、夢への扉を開けました。
しかし、憧れの世界は、そんな甘いものではなかったのです。競争意識の高いプロスポーツ世界でのプレッシャーに負け、毎日毎日先輩にダメ出しをされて精神的に参ってしまい、心まで病んでしまいました。今振り返ると、「受け身も知らないで柔道をしている」ような状態でした。投げられた衝撃をそのままに受けてしまい、痛がっているような(笑)。
憧れの世界での挑戦は、何の爪痕を残せずに1年半弱で自らの手で扉を閉めてしまいました。「今振り返っても、社会人生活で一番辛い日々でした」は、まさにこの時の日々をリアルに伝えるため発した言葉です。
これから、自分は何を目指してどう歩んでいくのかを、自問自答する日々が始まりました。そんな時に出会ったのが、『ザ・ビーチ』(2000)です。『タイタニック』(1997)で一世を風靡したレオナルド・ディカプリオが、次に何に出るかという周囲の期待の中、100本以上のオファーを蹴ってまで出演を決めた作品です。僕は、現実逃避も兼ねていましたが、「何かヒントを掴めるのはないか?」と自分の心に響く気付きの言葉を探すため、漫画や映画、音楽ライブなどに積極的に触れていたのです。
『ザ・ビーチ』は、自由を求めて未開の地へ冒険する主人公・リチャードを通して、現実感を喪失した現代のリアルな若者像を描いています。彼の“楽園”探しの旅は、自分自身の居場所を探し求める旅でもありました。
レオナルド・ディカプリオ演じるリチャードは、ラストにこう語ります。
「今でも楽園はあると信じている。でも、探し求める場所ではない。何故ならどこへ行くかってことではないから。楽園とは、大切な瞬間に心で感じる場所。その瞬間を見つけたら、それは永遠に残る。」
僕も会社という場所に“楽園”を求めていたのかもしれない…、映画を観てそんな思いが湧き上がりました。その思いを携え、僕は大切な瞬間を「心で」感じられる場所や人を求めてるようになりました。すると次第に、人との出会いが僕の心を育て、縁が機会を引き寄せ、挑戦こそが自分の人生を彩ってくれるようになっていったのです。その結果、スポーツメーカー(国内、外資)、スポーツメディア、アスリートマネジメントと、年々多義に渡って活動の場が広がっていきました。失意と栄光を繰り返しながら、それぞれのゴールである“楽園”に向かうアスリートの生き様を伝えることが、自分なりのスポーツと関わる道だということを、「感じる」中でわかっていったのです。
その思いを胸に、現在も日々邁進しています。 2020年4月の現在、新型コロナウイルスの影響は、スポーツ界にも大きなダメージを与え、東京五輪をはじめとした様々なスポーツの大会が延期や中止を余儀なくされています。しかし、いつの日かコロナ危機の終息を迎えた世界の人々にとって、これから開催されるすべてのスポーツ・スポーツイベントが、さらにそれぞれにとって特別な瞬間となり、心の奥底に刻まれる“楽園”となると、「スポーツアスリートの生き様を伝えること」に“楽園”を見つけた僕は信じています。
- 介護の中、夢を捨てずにいられたのは、あいつの「ただいま」が希望に向かわせてくれたから。映画『大脱走』
- 眠れない夜に私を救ってくれたのは、70年前の名作ミュージカル映画だった 『雨に唄えば』
- ままならない家族への感情……それでも確かに愛してる。『シング・ストリート 未来へのうた』で描く私の夢
- 嘘の中の紛れもない「リアル」。 いつまでも彼の踊る姿を観たいと思った 『リトル・ダンサー』
- 「どんな自分も愛してあげよう」 肩の力を抜くことができた『HOMESTAY(ホームステイ)』
- 映画って、こんなに自由でいいんだ。そんなことを気づかせてくれた『はなればなれに』
- 日々の選択を、愛ある方へ。自分を大切にするための映画『パパが遺した物語』
- 大丈夫。あなたが私を忘れても、私があなたを思い出すから 『43年後のアイ・ラブ・ユー』
- どうしたら色気を醸し出せるのか!?核心を隠すことで見えてくる、エロティックな世界『江戸川乱歩の陰獣』
- 幸せになるには、まず「幸せに気づく」こと。こんな2020年を希望にかえて締めくくる『食堂かたつむり』
- 仕事も休めばいい、恋もなんとだってなる。人生の舵は、自分が握っているのだ『嗤う分身』
- 号泣したワンシーンが、思いを届けるきっかけになる『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』
- 「私の人生、まんざらでもないのかも」見過ごしていた“当たり前”に魔法がかかる『顔たち、ところどころ』
- 東京という大きな「生き物」が、 人生の岐路に立つ人を静かにつつんでくれる『珈琲時光』
- 狂気を殺さない!愛してみる。生きていく『逆噴射家族』
- 動き出さない夜を積み重ねて、たどり着く場所がきっとある『ナイト・オン・ザ・プラネット』
- 時代の寵児バンクシーの喜怒哀楽や煩悶を追体験!?観賞後スカッとするかしないかは自分次第… 『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』
- 「帰省」を疑似体験。離れて暮らす父親の素っ気なくも確かな愛情『息子』
- 90分でパリの100年を駆け抜ける!物足りない“現在”を笑って肯定しよう!!『ミッドナイト・イン・パリ』
- 映画の物語よりも、そこに流れる「時間」に没入する 『ビフォア・サンセット』
- 慣れない「新しい生活」のなかでも、人生に思いきり「イエス!」と言おう!『イエスマン “YES”は人生のパスワード』
- 夢や希望、生きる意味を見失った時、再び立ち上がる力をくれた映画『ライムライト』
- 人の目ばかり気にする日々にさようなら。ありのままの自分が歩む、第二の人生。 『キッズ・リターン』
- 人に嫌われるのが怖くて、自分を隠してしまうことがあるけれど。素直になりたい『トランスアメリカ』
- 成功は、競争に勝つことではない。 「今を楽しむ」ことを、教えてくれた映画『きっと、うまくいく』
- それぞれの場所で頑張る人たちへ 「声をあげよう」と伝えたい。その声が、社会を変える力につながるから『わたしは、ダニエル・ブレイク』
- 僕が笑うのは、君を守るため。 笑顔はお守りになることを知った映画『君を忘れない』
- 心に留めておきたい、母との時間 『それでも恋するバルセロナ』
- 「今振り返っても、社会人生活で一番辛い日々でした」あのときの僕に“楽園”の見つけ方を教えてくれた映画『ザ・ビーチ』
- “今すぐ”でなくていい。 “いつか”「ここじゃないどこか」へ行くときのために。 『ゴーストワールド』
- 極上のお酒を求めて街歩き。まだ知らなかった魅惑の世界へ導いてくれた『夜は短し歩けよ乙女』
- マイナスの感情を含む挑戦のその先には、良い事が待っている。『舟を編む』
- 不安になるたび、傷つくたび 逃げ込んだ映画の中のパリ。 『猫が行方不明』
- いつもすぐにはうまくいかない。 自信がないときに寄り添ってくれる“甘酸っぱい母の味”『リトル・フォレスト冬・春』
- 大人になって新しい自分を知る。 だから挑戦はやめられない 『魔女の宅急便』
- ティーンエイジャーだった「あの頃」を呼び覚ます、ユーミン『冬の終わり』と映画『つぐみ』
- 振られ方に正解はあるのか!? 憧れの男から学ぶ、「かっこ悪くない」振られ方
- どうしようもない、でも諦めない中年が教えてくれた、情けない自分との別れ方。『俺はまだ本気出してないだけ』
- 母娘の葛藤を通して、あの頃を生き直させてくれた映画『レディ・バード』